コンセンサス政治はもともとありえない 『日本政治の崩壊』を書いた北岡伸一氏に聞く
──小沢一郎氏についても一貫して厳しい。
昔は、親しかったし、評価したこともある。1993年に書いた『日本改造計画』と今ではまったく違うことを主張している。彼は変わり、首尾一貫していない。94年の時点でさえ国民福祉税と称して7%の消費税を唱えた人間が、今はまだ消費税を上げなくていいと言っている。あまりに極端だ。
政治資金をめぐる裁判でも、無罪は青天白日ということではない。無罪は、裁判では有罪の証拠がないということだ。しかも、政治家は政治資金をはじめいろいろな特権をもらって、仕事をしている。その特権に応じた、普通の人より厳しい責任があるはずだが、その責任を果たしているのか。田中角栄にしても、捕まったのはロッキード事件だが、失脚は蓄財疑惑を説明できなかったことによる。
──それでも小沢氏の動向は気にされます。
2大政党が拮抗する時代には、何でも言うことを聞く人間が、30人や50人いたら、それだけで相当な影響力を持つ。昨年5月から6月にかけての菅直人首相不信任案騒ぎ、あれは何だったのか。禍根を残した。自民党が小沢さんの内閣潰しに乗り、その後の内閣では組まないで行こうとした。政党政治の原則からいえば、内閣不信任案は次の首相の具体像があって提出するものだ。どうなるかわからないのに提出しようとするものではない。ドイツ流の建設的不信任案であるべきなのだ。
自民党はまた、憲法を改正しようと主張しているが、肝心の参議院の権限には何も手を着けようとしない。本筋に手を着けないで、その一方で党内の参議院議員の賛同を得るのに汲々(きゅうきゅう)としている。