「なぜ私がこんな目に…」がん再発で絶望の淵にいた50代女性が、生きる気力を取り戻すまで――「心のSOS」を感じた人にも"緩和ケア"が必要な訳

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しかし、主治医はAさんの様子を見て、「抗がん剤治療が受けられる精神状態ではない」と判断。Aさんのように極端に不安感が強い状態など、抑うつを中心とした精神症状のまま治療を行うと、ますます精神状態が悪化し、通院が困難になるなど、治療にも負の影響を及ぼしかねません。

そのため、まずは精神的なケアを受ける必要があると考え、そのことを2人に伝えました。

「精神科にはかかりたくない」と頑なだったAさんに、「今抱えているつらさを和らげてくれる先生がいるから」と紹介されたのが、筆者でした。

「治ったはずなのに、なぜ再発したのか」「なぜ私がこんな目に遭わないといけないのか」「もうすぐ自分は死ぬに違いない」――。最初にお会いしたとき、Aさんはこうした大きな不安と憤りの渦にのみ込まれそうな状態でした。

無理もありません。「もう大丈夫だろう」と思っていたがんの再発。それを宣告されたのですから、そのショックは計り知れないものでしょう。

実際、Aさんは筆者の診察中も、口を開けば泣いてしまうような状態で、日常生活に支障をきたしている様子が見て取れました。何カ月も食事が十分に摂れない、眠れないというのは、まさにうつの典型的な症状といえるものでした。

精神的なつらさを和らげる

「緩和ケア」とは、病気や治療に伴うさまざまな症状やつらさを和らげる医療です。筆者は在宅医ですが、緩和ケアの専門医として大学病院でも外来を受け持っています。

身体的な痛みへの対処も緩和ケアの役割です(関連記事:「台所で料理も」寝たきりの70代女性に起きた変化)が、Aさんのような精神的なつらさを和らげるのも、緩和ケアの大きな役割です。

訪問診療に向かう中村明澄医師(写真:筆者提供)※一部加工しています
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