打ち明けられず闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪と板挟みとなって「嘘をつかなければ飛べない」という状態に
また、パイロットが健康上の理由で飛行停止処分を受けると、経済的打撃は甚大だ。病気休暇を使い切った後、障害手当の対象となることが多く、収入が大幅に減少する。
米商業航空会社のパイロット、トロイ・メリットさん(33)は22年12月、自ら進んで飛行をやめた。うつ病と不安障害が安全な飛行能力を損なっていると気づき、服薬治療を開始したという。
復帰には6カ月間の安定的な服薬と心理・認知テストをクリアすることが必要だった。それらの一部は健康保険の対象外で、メリットさんはロイターに対して約1万1000ドル(約170万5000円)かかったと明かした。
高額な自己負担
FAAの規則制定委員会は、こうした高額な自己負担が、パイロットたちを受診から遠ざける大きな要因になっていると指摘する。委員会が昨年まとめた報告書によれば、精神疾患の診断は、包括的な保険プランであっても、補償範囲が限定されることが多い。
メリットさんは復帰した時点で操縦から1年半離れており、障害保険で生活していた。治療経過が良好なパイロットが医療証明を再申請するのに6カ月も待たされるべきではなく、FAAはそうした申請を30日以内に審査すべきだとメリットさんは訴える。
メリットさんは回復後に大型機での操縦訓練を受け、上海や香港などへの長距離フライトをこなすようになった。かつては気が遠くなるほど困難に感じていた飛行だ。「いまの私は、あの頃より、ずっといいパイロットになれた」
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