プレイングマネジャーが管理職として成功する条件 外資系マネジャーが説く「リーダーシップの本質」とは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その点については、次のような例を通じて解説がなされている。

「Go the extra mile.(1マイル余分に行け)」(41ページより)

外資系企業でしばしば使われる、「期待以上のものを」という意味の表現。「5マイル行け」と言われたら6マイル行く、「10マイル行け」と言われたら11マイル行く。つまり、ただ期待どおりにするのではなく、「あと1マイルだけの努力や工夫」を加え、よりよいアウトプットを実現させようということである。

「顧客に一方的にリスクを負わせるな」(41ページより)

これは著者が、米国投資銀行に勤める友人から聞いた“会社が大切にしている行動原則”だそう。その友人が同社で初めて手がけた大型案件で、顧客側のリスクが大きくなりすぎていることを上司に指摘され、やりなおしを命じられたのだという。

すなわち、「信頼関係ビジネスとして、顧客と自分たち双方の利益を大切にする」という会社の理念を考え方に落とし込んだものだ。

「資料は事前配布、会議は5分前集合」(42ページより)

顧客の企業で著者が経験した行動原則。「顧客のために1秒たりとも時間を無駄にしない」という企業文化は、社長以下の経営陣が率先してこの行動原則を守ることで全社に浸透していたのだという。

「規律のなかの自由」で個性を生かす

「別に行動原則なんかなくても、仕事は回るものではないか」

そう思われる方もいるかもしれないが、そもそも「回る」とは、言われたことを言われたように行うという発想。当然ながらそれでは、多様性を生かした高水準の価値提供など実現できないだろう。

かといって、すべてに自由を与えたのではチームがバラバラになってしまう。そのため、行動原則によって“規律のなかの自由”を確保することが大切なのだ。

ただし行動原則は、決してメンバーの力を押さえつけるものではない。ましてや、それ自体が目的化されるべきものでもない。

だとすれば、なんなのか?

視線のベクトルの先にあるゴールに向けての、原則的な行動を共有するものである。なんでもありの“野放図な自由”ではなく、ギチギチに締めつけられた“ルールだらけの束縛”でもなく、“規律のなかの自由”が保障された状態。それがはっきりしていれば、メンバーは安心して主体性や多様性を発揮できるのだ。

印南 敦史 作家、書評家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事