ゴーン日産の野心、「ダットサン」を復活、新興国の覇者を狙う

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自動車大国・中国では量から質へとシフト

全販売台数の約4分の1を占め、日産にとって最大市場である中国。同国では12年春から現地ブランド「ヴェヌーシア」の販売を始める。第1号車「D50」の価格は、6万7800元(約88万円)からと、現地メーカーと真っ向勝負する。

その一方で中国では、また別の挑戦をする。高級車「インフィニティ」の現地生産だ。

中国市場には07年にインフィニティを導入したが、11年の販売は約2万台にとどまる。現状では栃木工場のみで生産、25%の輸入関税がかかる。「欧州のラグジュアリーブランドはほとんど現地生産している。パワー88達成のため競争力上も現地生産は不可欠だった」(中村公泰・東風汽車有限公司総裁)。中国は高級車でも世界第2位の市場だ。競合他社も熱い視線を送る。フォルクスワーゲン(VW)中国の幹部は「乗用車市場における高級車比率は、米国が2割超だが、中国は7%程度。拡大余地は大きい」と見る。

日産は11年に中国で約125万台を販売した。販売台数には小型商用車も含まれるが、乗用車だけをとってもトヨタ自動車を抜き、名実ともに日系トップになった。今後、VWや米ゼネラル・モーターズ(GM)に次ぐトップ3入りを果たすには、「量の拡大だけでなく質の改善が重要になる」(西川副社長)。

実は日産・仏ルノー連合において、品質を含めた総合評価でトップ2の工場は、中国にある。1位が広東省の花都工場、2位が湖北省の襄陽工場だ。インフィニティは襄陽工場での生産が計画されており、質への転換は着実に進んでいる。

西林隆・中国事業本部長は中国事業の現状を「4本足」と表現する。平均月販1万台を超える車種が四つあるという意味だ。フラッグシップ車の「ティアナ」、「シルフィ」「ティーダ」、そして10万元を切ったサニー。ちなみに日本で月販1万台を超える日産車はない。「4本足で立つことで事業が安定し、リスク分散にもなる」(西林本部長)。

「正しいことを正しくやれば、正しい結果が出る」(山下副社長)。ゴーン社長の経営スタイルは社内で徹底されている。換言すれば、プロダクトアウトでなく、マーケットイン。その姿勢が日系メーカーで新興国戦略に先行できた最大の理由だろう。

ダットサンからインフィニティまで。日産の新興国戦略は新局面を迎える。「中国で勝てても他国で勝てるとは限らない。新しいゲームが始まる」(ゴーン社長)。高成長を実現するには、日産は変わり続けなければならない。

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(週刊東洋経済2012年5月12日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:尾形文繁
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