『国宝』がアメリカで賞レース開始 アカデミー賞に立ちはだかる競合「社会派作品」に勝算は?

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意図的に流産した疑いで警察に逮捕された若い女性と、彼女のために闘う女性弁護士の実話を女性監督が語るアルゼンチンの『Belen』も、アメリカで中絶の権利が危ぶまれている今は、タイムリーな映画だ。

自国の暗い過去を見つめるという意味では、ほかに、イランの『The President’s Cake』、70年代を舞台にしたブラジルの『The Secret Agent』がある。

パク・チャヌク監督、イ・ビョンホン主演の韓国映画『No Other Choice』は、ブラックコメディではあるが、製紙業界に長年勤めてきた主人公(ビョンホン)が突然職を失い、同じ業界での再就職を望むも苦戦するという、世界の中年サラリーマンを取り巻く現実を描き、共感を得ている。

『国宝』のアピールポイントとは?

これらの作品は、「なぜ今、これを語るのか」という意図が明確だ。もちろん、政治的、社会的な映画がそうでないものより優れているということには、決してならない。そもそも、「優れている」と考える基準は、人それぞれに異なる。

『国宝』にも、アカデミー賞投票者へのアピール要素は十分ある。ロサンゼルスでの舞台挨拶で李監督自身が話したように、なにせ『国宝』は、歌舞伎という芸術のためにすべてを捧げる役者の話なのだ。

最高のものを成し遂げるために犠牲を強い、身近な人を傷つけたかもしれないという思いを抱いている人は、映画を作る人たちの団体であるアカデミーの会員にも少なくないのではないか。

アカデミーの内訳では俳優が最も多く、演技をきちんと勉強する中で歌舞伎を学んだ人もいる。それらの人たちが、異国の時代ものであるこの作品にパーソナルな思い入れを抱くのは自然である。

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