『国宝』がアメリカで賞レース開始 アカデミー賞に立ちはだかる競合「社会派作品」に勝算は?

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と、感触としては良い感じだったが、アカデミー国際長編映画賞の候補入りの可能性はどうだろうか。

正直なところ、ほかの国がエントリーしている作品を見るかぎり、競争はかなり熾烈と思われる。今回は、世界が直面している事柄に触れる、考えさせられる感動作が目白押しだからだ。

たとえば、チュニジアの『The Voice of Hind Rajab』は、家族とドライブ中、イスラエル軍の攻撃に遭ってひとり生き残った幼い少女が助けを求める電話の録音音声をもとに、救出に向けて努力する姿を描く実話ベースの映画だ。

パレスチナ問題に関しては、パレスチナ系アメリカ人女性監督が自身の家族の話に想を得て脚本を書き下ろしたヨルダンの『All That’s Left of You』、パレスチナの『Palestine 36』、イスラエルの『The Sea』もある。

イスラエル政府は、パレスチナの少年を主人公に据えた『The Sea』を強烈に批判しているのだが、この映画がオフィール賞を受賞したことで、自動的にオスカーのエントリー作品となった。そういう経緯も人々の関心をひきつけるだろう。

ウクライナのドキュメンタリー戦争映画も

また、政府を批判して逮捕されたイラン人監督ジャファル・パナヒが極秘で撮影し、フランスからエントリーされた『It Was Just an Accident』は、彼自身の身の上もさながら、映画の内容も良く、国際長編部門のみならず主要部門へ食い込む可能性もささやかれている秀作だ。

一方、ウクライナからのエントリー作『2000 Meters to Andriivka』は、『マウリポリの20日間』で2024年の長編ドキュメンタリー賞を受賞したミスティスラフ・チェルノフ監督による、いわば続編。ウクライナとロシアの戦争の最前線で、身を危険にさらしてまでとらえた映像はパワフルで、心を揺さぶる。

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