この状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患、さらには認知症などのリスクが高まることが複数の大規模研究で報告されています。睡眠専門医としては、「自称ショートスリーパー」の人たちの心身の健康がとても心配です。
「寝ている時間は無駄」と思って睡眠を削るのは大きな間違いです。睡眠は心と体を整えるために欠かせない営みです。もし自分が「ショートスリーパーかも?」と思ったら、いつもより30分から1時間長く眠ってみてください。朝の頭の冴えや集中力の違いに、きっと驚くはずです。
「いびき」は8割以上が未治療
パートナーのいびきで眠れないのは大変苦痛でしょう。しかし、睡眠専門医としては、パートナーの体も心配です。
いびきは「ぐっすり眠っている証拠」のように思われがちですが、重大な睡眠障害が隠れていることがあります。
特に、いびきが途中で聞こえなくなったり、音が大きくなったり小さくなったりしている場合には要注意です。睡眠中に舌根が喉の奥に落ちて気道を塞ぎ、一時的に呼吸が止まったり浅くなったりする「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。
パートナーには、できるだけ早く専門医を受診するようすすめてください。この病気で治療が必要な日本人の潜在患者数はおよそ1000万人といわれていますが、そのうち治療を受けている人はごく一部です。
潜在患者の8割以上が未診断・未治療とされており、実はかなり多くの人が気づかずに放置しているのが現状です。
怖いのは、一時的に呼吸が止まることで酸素が全身に行き渡らなくなることです。呼吸が再開した際には酸素が急激に増え、毒性の強い「活性酸素」が発生して血管に大きなダメージを与えます。さらに自律神経の働きが乱れ、本来安定しているはずの睡眠中の血圧が乱高下します。
この状態が続くことで日中の血圧も上がり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まり、死亡リスクが上昇することも複数の研究で報告されています。
また、夜中に何度も中途覚醒して熟睡できないため、日中の強い眠気や集中力低下を引き起こし、居眠り運転などのリスクも高まります。
睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を受ければ改善が期待できる病気です。早めに専門医に相談しましょう。
いびきを軽減するには家庭でできるいびき対策としては、まず仰向けではなく横向きで寝てみることです。こうすると舌が喉の奥に落ちにくくなり、いびきが軽減することがあります。
また、アルコールや肥満がいびきの原因になることもあるため、アルコールを控え、体重管理をしっかり行うことも有効です。



















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