うがいでも手洗いでもない…「インフルエンザ発症率が10分の1に減少」研究で判明した超有効な感染対策とは

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「ピッキング」対策

もう1つの重要な対策のために、まず「唾液」の役割を知ることが大切です。唾液には「殺菌効果」「除菌効果」「洗浄効果」などさまざまな効果がありますが、特筆すべきは外部から侵入してくるウイルスや細菌に対して抵抗する「免疫効果」です。唾液に含まれる「免疫グロブリン」の一種(IgA)は、体内に入り込もうとするウイルスに果敢に挑み、ウイルスを無毒化します。

さらにお口の中を清潔にすることによって、唾液の量と質が上がります。口腔ケアで唾液腺を刺激してお口の中を潤すことは、感染の入り口であるお口の中に「天然バリア」を強化することにもつながるのです。

抗ウイルス薬の効果も出にくくなる可能性

歯周病菌という共犯者の仕事は「感染」「重症化」だけではありません。治療の段階でも悪影響を及ぼします。

インフルエンザ治療薬として有名な「タミフル」や「リレンザ」、「イナビル」といった薬は、侵入した細胞からウイルスが出て行き、他の細胞に広がることを邪魔することで効果を発揮します。これらの薬は、ウイルスの表面にある「ノイラミニダーゼ(NA)」という酵素の働きをブロックするため「ノイラミニダーゼ阻害剤」と呼ばれます。

しかし、数多くの歯周病菌が手引きをして、ウイルス感染に加勢しているとしたらどうでしょうか? 実際に、歯周病菌が出すジンジパインなどの「毒素(酵素)」は、インフルエンザウイルスのHA(カギ)に作用し、感染力を高めます。

研究によって、歯周病を発症しているとウイルスの量が21~28倍に増えると報告されています。専門家からも「口腔内の細菌(主に歯周病菌)によるウイルス活性化は、抗インフルエンザ薬の作用を抑制する」可能性が示唆されています。

薬の正しい服用は大前提で言うまでもありませんが、薬の作用を邪魔する要因もなるべく取り除いたほうが賢明です。

ここまで読んで、「私は歯周病に罹患していないから大丈夫!」と思っている方も多いのではないでしょうか。実はここに最大の「落とし穴」があります。最も怖いことをお伝えしましょう。

歯周病は「世界で最も蔓延している感染症」として2001年にギネス世界記録に認定されていますが、初期段階では自覚症状はありません。それは歯周病菌が「最恐」の菌だからです。歯周病菌は歯茎の神経を麻痺させるので、歯周病で歯がぐらついても痛みを感じられません。

また歯周病菌は嗅覚まで麻痺させてしまい、歯周病の症状である悪臭(口臭)さえも自覚させません。忍者のごとく気配を消して侵襲するのが、歯周病の進行です。だから歯周病は別名「沈黙の病気」と呼ばれているのです。

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