「またBL作品か…」「思ってた手越祐也と違う」 ドラマ『ぼくたちん家』を「ただのBLドラマ」と敬遠する人は"損をしている"理由

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そう、『ぼくたちん家』では、もちろん、男性同士の恋模様も描かれるものの、それはすべてではない。ゲイの男性の生きづらさと、こういった働く女性の生きづらさと、さらには「トー横」と呼ばれる場所で生きる子どもたちの生きづらさとがカットバックで描かれるようなことも多い。

「BL」という言葉で集約してしまうと、削ぎ落とされてしまうものが多すぎるドラマなのである。

ぼくたちん家
主人公の波多野玄一を及川光博が繊細に演じる(画像:日本テレビ『ぼくたちん家』公式サイトより)

『Q10』『セクシーボイスアンドロボ』と通じるイズム

『すいか』以外にも、過去の木皿泉脚本の河野プロデュース作品と通じる要素は多い。

『ぼくたちん家』では、渋谷凪咲演じるパートナー相談所のカウンセラーの「恋と革命」という言葉に主人公の玄一が勇気を得て行動を起こしていく。

『Q10』にも「恋は革命ですよ。自分の中の常識が全部ひっくり返っちゃうようなものなの」と、教師役の薬師丸ひろ子が、佐藤健演じる主人公に教えるシーンがある。

『ぼくたちん家』では太宰治の引用であることが明示されるが、大量の本を読み込んで執筆にあたっている木皿泉のことだから、そもそものこの『Q10』のセリフ自体が太宰の一節からとって膨らませた可能性も高い。

また、好きだった先輩のヒゲをティッシュにくるんで「人を好きになった証拠」として大事にしていた『ぼくたちん家』の作田の姿勢と、『セクシーボイスアンドロボ』で、レシートを「俺の生きた証」として大事にする中村獅童演じる男にも、多くの人が捨ててしまいそうなものに“証”として執着するという共通項がある。

ぼくたちん家
同じアパートで暮らし始めた2人(画像:日本テレビ『ぼくたちん家』公式サイトより)

ここで挙げたのは一例だが、木皿泉と河野プロデューサーの作品に通底する“イズム”のようなものが物語のそこかしこで顔を出すのだ。

『ぼくたちん家』の脚本を手掛けるのは、松本優紀という第1回 日テレシナリオライターコンテストで審査員特別賞を受賞した新人脚本家だ。『すいか』のときと同様、放送終了後に、このドラマが各賞を総ナメするといった事態もありうるかもしれない。

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