「またBL作品か…」「思ってた手越祐也と違う」 ドラマ『ぼくたちん家』を「ただのBLドラマ」と敬遠する人は"損をしている"理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

だが、『ぼくたちん家』は、多くの人がいわゆる「BL」と聞いて想像するものとは異なった雰囲気の作品であるし、性的マイノリティの人々の生きづらさのみを描いた作品でもない。

同じ河野英裕プロデューサーが手掛けた『すいか』(2003年)のように、放送後に評価が高まり、賞を受賞することも想像にかたくない名作だと思うのだ。

ぼくたちん家
「心優しき一人のゲイが、恋をした。」というキャッチフレーズは、確かに「BL」だが……(画像:日本テレビ『ぼくたちん家』公式サイトより)

名作ドラマ『すいか』との共通点

『ぼくたちん家』を観て感じたのは、これは第2の『すいか』になりうる可能性を持つドラマなのではないか、ということである。

『すいか』とは、前述のとおり、『ぼくたちん家』と同じ河野プロデューサーが手掛けた、03年7月クールに日本テレビ土曜21時の枠で放送された小林聡美主演のドラマである。

同作は、放送当時は平均8.9%と、当時としては低く、視聴率が伸び悩んでいた。だが、この作品で初めて連続ドラマの脚本を担当した脚本家・木皿泉(和泉務と妻鹿年季子による夫婦脚本家)は、向田邦子賞を受賞。熱狂的なファンも多く生まれ、DVDも長期間にわたって売れ続けた。

木皿泉は『すいか』の後も、河野と組んで『野ブタ。をプロデュース』『Q10』といったヒット作を世に送り出すことになる。ドラマ史においても重要な作品と言っていいだろう。

『ぼくたちん家』には『すいか』と、根幹の設定が似ている部分がある。

まず『ぼくたちん家』では、ほたるの母親である楠ともえ(麻生久美子)が逃走している。その理由は会社の金を横領したことである。一方、『すいか』では、小林聡美演じる主人公の会社の友人、馬場チャン(小泉今日子)が、第1話で会社の金を横領して逃走する。

ぼくたちん家
麻生久美子演じる、訳あり女性の楠ともえ(画像:日本テレビ『ぼくたちん家』公式サイトより)

また『すいか』の舞台は「ハピネス三茶」というアパートで、登場人物たちがそれぞれの部屋を持ちながらも共同生活する設定だが、『ぼくたちん家』も「井の頭アパート」というアパートがメインの舞台となり、そこに住む登場人物たちの交流を描く。

ちなみに『ぼくたちん家』というタイトルになる前の候補は『ししゃも』だったというから、もはや意図的に第2の『すいか』を構想しているのではとも勘ぐってしまう。

次ページ横領をした女性を悪人として描かない
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事