「またBL作品か…」「思ってた手越祐也と違う」 ドラマ『ぼくたちん家』を「ただのBLドラマ」と敬遠する人は"損をしている"理由

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さらに特筆すべきは、それぞれの作品の登場人物が会社の金を横領した理由である。

『ぼくたちん家』では、9日に放送された第5話「私がもらえなかったお金、3226万1570円」でその理由が語られた。

就職氷河期に契約社員として就職した楠ともえは、結婚・出産を経た後もずっと1つの会社に契約社員として勤めてきた。

だが、若い男性の契約社員がたった1年で正社員になったことをきっかけに疑問を持ち、男性と女性の給料の差が、特にちゃんとした理由もなく1時間につき504円違うという事実にたどり着く。

そして、“契約社員だからもらえなかったお金・女性だからもらえなかったお金”を計算した合計額と同じ額を横領したという話である。ともえはそのときの心境をこう語る。

「気がついたんです、女だからナメられてたんだ、ずっと、って」

ぼくたちん家
ともえが横領した3000万円を、元夫仁(光石研、写真左)が狙っている(画像:日本テレビ『ぼくたちん家』公式サイトより)

一方、『すいか』の第1話では、会社の金を横領した馬場チャンとの普段の会話の内容を聞かれた主人公が、馬場チャンの言葉としてこう語るシーンがある。

「会社は、私たちの事を粗末に扱ってないか? その事が、とても悔しい。14年間、粗末に扱われることに慣れようと努力してきたけど、それでも慣れなかった私が悪いのか」

2つのドラマはともに、横領をした女性を悪人として描かずに背景を描写する。

「ナメられてた」「粗末に扱われていた」と表現こそ少し異なるものの、ともに、働く女性の置かれてきた状況を的確に捉えたセリフである。女性側の不当な扱いに対する憤りが、今もドラマの内容として成立するのは22年間、日本社会が進歩していない証拠でもある。

あまりに理解のないコメント

ともえが横領した理由を語るシーンがアップされた『ぼくたちん家』の公式Instagramには、おそらく男性のものと思われるアカウントによる「結果が全てです」というコメントが投稿されていた。

この絶望的なまでの理解のなさこそが、こういったドラマがまだまだ作られなくてはいけない世相を反面教師的に表しているような気さえした。

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