「ああ、またか…」消えゆく小さな雑貨店。背景には「100円ショップ」や「スリコ」の台頭?100均の売り場から占う、いま《消滅の危機にある業態》とは
アウトドアレジャー用品も、すっかり100均のカテゴリーと化している。キャンプ用のレジャーチェア、焼き網や固形燃料、メスティンやダッチオーブンなど調理道具・食器類も一通りそろってしまう。
エントリー層にとってプロ用器具は必要ない。わざわざホムセンやアウトドアショップまで足を運ばなくても、100円ショップで買え、しかも安いとなると、それで十分だ。つまり、専用ショップはこうした客層をごっそり奪われかねない。安さ勝負をしても、100円ショップにかなわないからだ。
そういう視点で100円ショップの売り場を見ていると、「この業態の店は、今後も生き残れるだろうか」と思うことがある。
最近その懸念を感じているのは「手芸店」だ。筆者が子どもの頃は、ボタンや毛糸を扱う手芸店をよく見かけたものだ。昔はどこの家庭にもミシンがあったし、母親が型紙を元に子供服を縫ったり、セーターを編んだり、というのは当たり前の日常だった。
さすがに自宅で洋服を縫う人は少ないだろうが、今でも裁縫を趣味とする人にとってはなくてはならない店だ。しかも、最近は編み物ブームが起きているという。コロナ期の巣ごもり生活で、家でできる手軽な趣味として手芸やクラフトが人気を集めたからだ。そこに目をつけたのが100円ショップというわけだ。
冬の気配の到来とともに、100円ショップには色とりどりの毛糸が並ぶようになった。他にも手芸用のフェルト、端切れ、レースやアップリケ、ホックや刺繍糸など多種多様なソーイング素材が手に入る。
素材だけでなく、YouTube上には100均で商品として売られているカーテンやマットをリメイクしてバッグを作ったり、タオルでショートパンツを縫ったりという動画も上がる。さすがにミシンの取り扱いこそないが、それ以外の材料はまるごと100均で調達できてしまう。このままでは街中の手芸店は、先の文房具店と同じ運命をたどってしまうのではないだろうか。
100円ショップが手を引いた後は…
消費者にとっては、100円ショップにさえ行けばどんなものでも手に入るというのはありがたい。しかし、そこには考えたくない副作用もある。近所から文房具店が消えたとしよう。その後、代替えとなっていた100円ショップが急に閉店したら、消費者はいきなり困ってしまう。
あり得ない話ではない。100円ショップは商業ビルのテナントとして入っていることが多いので、テナント料等の条件が折り合わなくなったり、再開発などで商業ビルそのものが撤退したりする場合もある。そうなると営業を続けることはできない。
閉店まではないとしても、あるブームが去るとそのアイテムの扱いが急減するだろう。100円ショップは専門店ではなく、広く浅くのスタンスで売れ筋商品を入れ替えるものだからだ。
この先、編み物人気が沈静化したら、重点商品から外れ、別のブーム商品に置き換わる。そうなったときに、すでに手芸用品を買える店が他になくなっていたとしたら、100円ショップ頼みだった消費者はいきなり迷子になるだろう。
なんでも100均で安価に手に入る日本とは、消費者にとって真のユートピアなのか、それはわからない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら