以上が私が行った研究のまとめですが、ほぼ同時期に似た研究が発表されました(※3)。
これはUK Biobankというヨーロッパのデータを使い、平均62歳くらいの方を対象としたもので、1回のウォーキングの持続時間が健康と関わるかを検証したものです。
この研究では、平均歩数で調整した後も、1回のウォーキングの持続時間が長ければ長いほど死亡率が低いことを示しています。なお、この比較は1回5分未満/5~10分/10~15分/15分以上という「かなり少ない持続時間」での分け方です。
この研究が示唆していることは、1日の中で「しっかりとウォーキングの時間をとること」が重要であるということで、これは平均歩数では示しきれない「運動習慣の良い側面」を示しているということかと考えられます。
しかもこれは平均歩数を加味した上でも追加的な恩恵があるかもしれないということ。歩く習慣をつける際には、1回のウォーキングの時間をしっかり確保することは大事なようです。
日々のウォーキングの習慣を振りかえろう
一方で、人によって効果が異なることも重要です。特に歩数と健康の関連性は年齢によって大きく異なることが示されています。
上2つの研究も対象年齢の平均の差が10歳程度ある点は注意する必要があります。また、どちらの研究も運動量を1週間しか測定しておらず、時間がたって運動習慣が変化することについては考慮できていません。
さらに、どちらの研究も「ウォーキングをしていた人が死亡率が低かった」という関連性をみたものであり、直接に因果関係(「ウォーキングをすると死亡率が減る」ということ)を主張しているものではありません。
例えば、具合が悪いから歩数が少ないという逆の因果関係を捉えている可能性もあります。ただ、それを考慮したような解析を行っても同じような結果が得られており、因果関係を一部捉えられていると考えています。
以上をまとめると、因果関係がはっきりしない点もあるものの、少しでも運動する健康のメリットはかなり大きいことが言えます。1日1万歩でなくても、たとえば4000歩を週1~2日でもいいので、ウォーキングの習慣をつけることで心臓病や早期死亡の予防が効率的にできるかもしれません。
ぜひこのようなエビデンスを参考に、日々のウォーキングの習慣を振りかえってみてください。
※1. Paluch AE, Bajpai S, Bassett DR, Carnethon MR, Ekelund U, Evenson KR, Galuska DA, Jefferis BJ, Kraus WE, Lee I-M, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. The Lancet Public Health. 2022;7:e219–e228.
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