「自分でやったほうが早い」「いい結果を出せると思えない」…"部下に仕事を任せない"上司がしがちな"言い訳"とその裏側にある心理

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しかし、「今日だけは絶対にミスしないで」と祈るほど大事なときに、思わぬミスが起きてしまったのです。ルールで「許可なく触らない」と決められていた業務用サーバーを、メンバーが自己判断で操作してしまい、重要なディレクトリを誤って削除してしまいました。

その結果、200以上の業務処理が一斉に異常終了……。

パソコンに映った真っ赤な警告画面を見て、私は完全に自信をなくしました。背に腹は代えられなくなった私は、思い切って考え方を180度改めました。

現場のことを一番知っているのは、紛れもなくメンバーです。

ですから、「成果を出してくれそうな適任者を探し、いなければ指示を出す」という考え方を捨て、まずはプロジェクトにおいてメンバーと「目指すべき目標」を徹底的に共有することにしました。

そして、その目標達成のためにメンバー自身が考えて行動し、メンバー同士で対話できる環境を整えることに注力しました。

言わば、「コントロール」から「エンパワーメント」へのマネジメントの大転換を図り、「人への投資」「設備への投資」に本格的に焦点を当てたわけです。

「人への投資」がチームを強くする

最初は、私の急な方針転換にメンバーたちは戸惑っていました。

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しかし、日常的に対話を重ね、ざっくばらんに意見を交わし合える場を作り続けたことで、次第にメンバーの仕事への姿勢が変わっていきました。

3カ月もすると、その変化は「個の成長」という形で成果にも現れてきました。そして6カ月後には、クライアントのマルチベンダーの中で、品質や納期、クライアントとの協働関係において、なんとトップの成績を収めるに至ったのです。

「任せられる人がいない」というのは、本当にウソです。「人に任せられるリーダーがいない」というだけのこと。

こんな私でさえ、どん底から「任せられる人を育てる」ことにシフトすることができました。だから、あなたも、決して今からでも遅くありません。まずはメンバーを信じ、初期投資に徹しましょう。

五十嵐 剛 株式会社リーダーズクリエイティブラボ 代表、いきいきチーム創り仕掛け人

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いがらし つよし / Tsuyoshi Igarashi

長野県東御市出身。上田高校卒。東海大学卒業後、長野市のNECグループ会社に入社し、NEC本社に逆出向。実績を認められて移籍。中央官庁の大規模システムプロジェクトを担当するなど、リーダーとして多様な現場を経験。年間売上600億円、メンバー1000人超のプロジェクトを率い、NECグループ12万人の中から年100人しか選ばれない社長賞を前代未聞の4度受賞。しかし、その裏で「指示型リーダー」として任せられない苦悩を重ね、突発性難聴を発症。孤独の中で「任せる勇気」こそがチームを動かす原点だと痛感し、トップダウンとボトムアップを融合させた独自のマネジメントスタイルを確立。すると、わずか半年で危機的プロジェクトをV字回復へ導く。

2023年にNEC を定年退職。株式会社リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEOに就任。チームを自律に導くリーダーの育成や、結果を出すチームビルディングを支援している。著書に『結果を出すチームのリーダーがやっていること』(すばる舎)がある。

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