「寂しさはまったくない」82歳《最後の村人》が"理想郷"で1人暮らしするワケ…文豪・武者小路実篤がつくった村で送る「孤独でも豊かな生活」
かつて文豪が理想郷をつくろうとした村が、九州の山奥にある。
金や暴力にまみれた世間から離れ、「自他共生」の世界を追い求めようとした"村人"は、いまや実質的に一人を残すのみだ。
その人物はどんな生活を送り、現代社会をどう見ているのか──。長年気になっていたその村を訪ねるため、宮崎の山の中へと向かった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
「ついて来る?」山中の水源まで同行することに
「安定した仕事には絶対につかない。おもしろくなきゃダメ。自分のやりたいことをできる自由が大事なの」
宮崎県木城町(きじょうちょう)にある「新しき村」の住人、松田省吾さん(82)は、田んぼに水を引く溝を整えながら話す。
山に囲まれた広大な土地には田畑が広がり、自ら建てた家や小屋が並ぶ。近くでは放牧された豚が泥まみれになって動き回っていた。
「今日はちょっと水源を見に行こうと思ってるけど、ついて来る?」
田んぼや生活に必要な自家用水を山から引いており、40年前につくった取水ダムの様子を定期的に確認しているという。松田さんはスコップを片手に、標識もない山道へと入っていった。



















