「蔦重」の妻が挑んだ「儒教バトル」?
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第39話では、危機に陥った蔦屋重三郎を救うべく、妻のていが定信のブレーンである柴野栗山に直談判をする。
ここで両者は儒教のテキストを用いた論戦を行っている。古典を引用した議論は、教養を自分の文脈に引きつけて説得力を持たせるし、古典日本語は響きが良い。ゆえになんとなく格好良く、手に汗握る緊張感がある。
そこではていが『論語』を引き合いに出し、朱子学が刑罰で人々を脅すことを好まないにもかかわらず、定信がそれを行っていると訴える。対する栗山もまた『中庸』を引き、蔦屋は恐れ知らずで二度も過ちを犯したと反論する。これにていは、寛容さこそ正しいとして「義を見てせざるは勇なきなり」と言う。かくして栗山は少しく心動いたという筋書きだろうか。
もっともこれは創作に過ぎない。ただ、この筋書きだと徹底して不寛容で視野の狭い松平定信像が際立つため、いささか看過できないものがある。そこで両者の引いている言葉を使えば、本来どのような議論になるのか、少し深掘りしてみたい。




















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