「また強豪校か…」「広陵高校と同じ末路になる」仙台育英サッカー部の《いじめ重大事態》大炎上していなくても"事態は深刻"なワケ

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そもそも、「いじめ」の定義自体があいまいなものだ。

広陵高校や仙台育英が対応の基準にしている「いじめ防止対策推進法」が制定されるきっかけとなったのは、11年に起きた滋賀県大津市の「いじめ自殺事件」だった。

しかし、この事件においても、後から行われた詳細の調査によって「いじめと自殺の因果関係は不明」「いじめがあったかどうかもわからない」という驚くような結論に至っている(『囚われのいじめ問題――未完の大津市中学生自殺事件』21年、岩波書店)。

「いじめ防止対策推進法」制定後も、やはりいじめの定義は明確ではないし、判断が難しい状況だ。

未成年者の場合、加害側も被害側も明確に自身の行った、あるいは受けた行為が「いじめ」と自覚しているとは限らない。たとえ自覚していたとしても、そのことを教員や部活の監督・顧問に報告するとは限らない。

今回のケースは「いじり」を受けた部員がうつ状態になっていたにもかかわらず、学校側が「いじり」を「いじめ」と認識できずにいたところが問題となっている。

しかしながら、両者の線引きはあいまいで、同じ「いじり」行為が行われたとしても、当事者間の関係や、受け手側の受け取り方によって、「いじめ」かどうかという解釈は変わってきてしまう。

情報を開示してもしなくても批判される

さらに問題になるのが、そうしたあいまいな状況下で学校側は意思決定を下さなければならないという点だ。団体競技で大会を出場辞退するとなれば、連帯責任となり、無関係の部員にも影響がおよぶことになる。

大体の生徒において在学中に試合に出場できる機会は、実質はせいぜい2年間程度の間だ。つまり、1回の出場辞退でも大ダメージであるし、部が活動停止になったりすると、さらに影響は大きくなる。部活での大会出場は、中高生時代の唯一無二の体験だ。

どうしても慎重にならざるをえない一方で、問題を起こしたチームが出場することが大きな問題に発展しかねないことは、広陵高校の事例が示すとおりだ。

最後の当事者のプライバシー・人権保護の問題だが、広陵高校の事案では、加害者とされている部員のほか、無関係の部員まで誹謗中傷にあい、個人情報がネット上でさらされてしまうという事態が起きた。

さらに、学校に爆破予告がなされたり、同校の無関係な生徒が追いかけられたりすることまで起きてしまった。

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