物件の家賃がお手頃なこともあり、住宅街型商店街は新規で商売を始めたいという人にも選ばれやすい。砂町銀座商店街のまんなかあたりにある「Spicafe(江東区北砂4-11-10)」もそのひとつだ。
ここは60代の店主が1年ほど前に居抜きで物件を借りて商っている。「恥ずかしいから名前と顔はNGだよ」ということだったが、街の魅力についてはおおいに語ってくれた。
薄情な人が多いと少し後ろ向きになっていたが…
「これまで大手の飲食チェーン店で長く仕事をしてきた。この店は、1年ほど前に始めたんだけど、最初は不安だったよね。世の中薄情な人間が多いでしょ。年々薄情になってきてる気がする。そんな気持ちがどっかにあってさ、商店街でカフェなんかやっても誰も来てくれないかもしれないって思ってた。でもね、蓋を開けてみて驚いた。この1年、1日も欠かさずに来てくれるお客さんもいるんだよ」(Spicafe店主)
薄情な人が多いと少し後ろ向きになっていたらしいが、ここで商売を始めてから考えが変わったのだという。
「お客さん同士、名前も知らないのに毎日のように顔を合わせて、仲良く会話して、ここにいる間だけは“仲間”になれるんだ。そんな人たちが私にも“がんばりなよ”って声をかけてくれる。人情と言ってしまえば簡単だけど、この街にはそれを越えたつながりがあるような気がしますね」(Spicafe店主)
そんな話を聞いている最中にも、向かいで「よろず屋 順(江東区北砂3-35-20)」の看板をあげる渋田順二さんが「コーヒーひとつちょうだい」と勝手知ったる様子で入ってくる。Spicafeの店主は渋田さんを指して「この人、砂町銀座のドンファンって呼ばれてるんだよ」と紹介してくれる。


















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