KKR、汐留シティセンター「3000億円」買収劇の内幕/セキュリティー・トークンの新たな活用例となるか
2年にわたる入札の末に待っていたのは、意外な結果だった。
9月29日、シンガポールの政府系ファンドGICは、東京都港区に立つ超高層ビル「汐留シティセンター」を売却した。米投資ファンドであるKKR傘下の運用会社KJRマネジメント(10月にKJRMプライベートソリューションズに会社分割)が運用するファンドが、信託受益権の準共有持ち分44%を取得。東洋経済の試算によると、1棟に換算した取引価格は約3000億円だ。
耳目を集めたのはビルの売買よりもむしろ、資金調達にST(セキュリティー・トークン)が使われたことだ。
KJRMの私募ファンドと見られるSPC(特別目的会社)が取得した持ち分はわずか12.7%。投資資金を確保するため持ち分の一部をSTとして小口化し、証券会社経由で個々の投資家に販売したのだ。STの発行額、活用法ともに異例の買収劇が日の目を見るまでには、さまざまな紆余曲折があった。
電通本社ビルに続け
汐留シティセンターは2003年、旧国鉄汐留貨物駅の跡地の再開発によって誕生した。GICは竣工時から一貫してビルの所有者だったが、23年秋に売却に着手する。
理由として挙げられるのは、運用成績の不振だ。23年3月末時点で過去5年平均の名目リターンが3.7%に低下。世界的な金利上昇による欧米の資産価格下落を埋め合わせるべく、低金利が続く日本で益出しを図ろうとしたわけだ。
売却に当たってベンチマークとされたのは、道路を挟んで向かい合う電通本社ビル。立地や築年数、規模が似ているうえ、21年にヒューリックなどが出資するSPCが3000億円規模で取得していた。




















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