大手証券も無視できない「デジタル証券」の破壊力/5大証券がそろい踏み、100億円超の案件も続々
・KKR、汐留シティセンター「3000億円買収劇」の顛末
・日本初の映画ST「劇場版 宝島」が待ち受ける運命
大手証券が乗り遅れまいとするほど、市場は大きくなっていた。
「デジタルアセット事業の開始について」。10月、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)がブロックチェーン技術を用いたデジタル証券(セキュリティー・トークン、ST)に参入した。同月に社債、翌11月に都内マンションの受益権をSTとして小口化し、投資家に販売すると発表した。
STは取引の効率化やデータの安全性に優れ、不動産などのオルタナティブアセットを小口化できる点に特長がある。2021年に1号案件が発行されて以来、さまざまな商品が流通し、野村や大和、SMBC日興、みずほなど大手証券が相次いで引き受けに乗り出した。
MUMSSの参入表明には最後発となった焦りがにじむ。説明資料には「STを取り扱えていないことに伴い、発行体への訴求力低下」「今後も同様の状況が続けば、引受機会・シェアの損失」といった文章がつづられている。
とりわけST化が活発かつ金額も大きい不動産分野では、ライバル証券が着々と実績を積み上げている。発行額の数%が手数料となることから、市場が拡大を続けるSTは、今や大手証券にとって無視できない存在となっている。

黎明期から様変わり
STの黎明期にあたる4年前は、決してそうではなかった。21年8月、不動産ファンド運用大手のケネディクスが不動産STの第1号を公募した。賃貸マンション1棟を裏付けに受益権を14億円でST化し、野村とSBI証券が引き受けた。STという言葉はまだ一般的でなく、証券各社は静観していた。




















無料会員登録はこちら
ログインはこちら