「世界最大級の"超マニアック"博物館」《国立民族学博物館》の"展示されていない33万5000点資料"を狙う者の正体

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ですよね……。2時間ドラマなら殺人事件が起こりかねない設定だ。それだけにオペレーションは安全性を最重視している。作業は一人では行わず、チームで行う。二酸化炭素が漏れると施設内の二酸化炭素濃度が上昇して危険なので、センサーで漏れを検知できるシステムを導入している。

これだけでもうじゅうぶん虫も死ぬように思えるが、民博では他にも高温処理と低温処理のシステムを持っている。

「二酸化炭素処理だと、資料の表面は二酸化炭素濃度が上がります。でも、内部までは濃度を上げられないんですよね。害虫が資料の内部にいる場合、表面処理だけでは効果がない場合があります。だから熱伝導で内部まで温度を上げることができる高温処理を施します」

5種類もの殺虫処理ができる唯一の博物館

変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館
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ただし、温度処理にも難しさは付きまとう。複合素材の資料には使いづらいという欠点があるのだという。収縮率や熱膨張率が異なる素材が組み合わされた資料であれば、変形してしまう恐れがある。それぞれの処理方法に長所と短所があるのだ。

「いろいろと難しいんですね。では低温処理はどうですか?」

「低温処理は比較的安全な方法で、布や絨毯などに使用することが多いです。欧米では低温処理がよく使われています。オペレーションもさほど難しくないので、低温処理施設を持っている博物館は多いです。注意しなくてはいけないのは結露ですね」

5種類もの殺虫処理ができる博物館は国内では民博だけだ。とりわけ、化学薬剤処理ができる施設を持っている館は限られている。また、民博ほど大型の処理場を持っている施設も多くはない。そのため、民博は他の博物館から処理依頼を受けることもあるのだそうだ。

樫永 真佐夫 国立民族学博物館教授/文化人類学者

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かしなが まさお / Masao Kashinaga

国立民族学博物館教授、文化人類学者。1971年兵庫県生まれ。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。10年、第6回日本学術振興会賞受賞。著書に『道を歩けば、神話 ベトナム・ラオス つながりの民族誌』『殴り合いの文化史』(左右社)他多数。23年より『月刊みんぱく』編集長。ボクシング、釣り、イラスト、料理など、いろいろする変人二十面相。

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ミンパクチャン ルポライター

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みんぱくちゃん / Minpakuchan

ルポライター、市井の国立民族学博物館ファン。

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