「世界最大級の"超マニアック"博物館」《国立民族学博物館》の"展示されていない33万5000点資料"を狙う者の正体
あーっ、わかるわ、それ。蚊とかね。いつだって、帰宅してガチャっとドアを開けたその一瞬である。「お邪魔ムシ〜」って一緒に家に入ってくるあいつら、ほんまに何なん?
民家の小さなドアでさえ、一瞬の隙をついて蚊もハエもなんならGも入ってくるのである。ここは周囲を緑に囲まれた民博だ。バカでかいシャッターが開いていたら、虫も入り放題だろう。
「荷解梱包室に持ち込まれた資料は点検され、そのあと必ず殺虫処理が施されます。目視では虫は付いていないように見えても、どこに潜んでいるかはわかりません。では殺虫処理の施設を見に行ってみましょうか」
5種類の殺虫処理で一網打尽
荷解梱包室を奥のほうに進んでいくと、工場のような施設が現れた。くん蒸室と呼ばれる施設である。その一角にある重そうな扉を開けるとボイラー室のような6畳ほどの密室がある。
「この施設では5種類の殺虫処理ができるようになっています。なかでも、この多機能くん蒸室では3種類の処理を行うことができます」
5種類の殺虫処理というのは、化学薬剤を用いた処理、二酸化炭素処理、低酸素処理、高温処理、そして低温処理だ。
もともとくん蒸に使用されていた臭化メチルという化学薬剤は1992年にモントリオール議定書でオゾン層破壊物質に指定され、2005年に全廃された。そのため、薬剤に代わる方法として開発・導入された二酸化炭素処理や低酸素濃度処理が日本の博物館では主流となっている。
「民博では、海外から収集した資料にのみ化学薬剤を使っています。海外からの資料にはどんな生物が付着しているかわかりません。くっ付いてきた生物が生態系への影響を与える可能性もありますし」
海外からのコンテナに乗ってやって来たセアカゴケグモとかヒアリが日本で増えちゃったというニュースを目にすることがある。なるほど、ああいうやつか。

















