「胃がん」「前立腺がん」そして「軽度認知障害」…山本學が抱える【自身の病気を語ること】への葛藤

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朝田 医師になって四十何年かになるんですが、世間の人が医師に対して求めているものは2つあるという話をすることがあるんですね。

ひとつは、その人の持つ技術、技量。専門医の資格を取っているとか、どこで修業してきたかとか、そういうことです。もうひとつは人間性、要するに、医師として本気で患者である自分のことを考えていてくれるのか、ということです。

その後者のほうは、まさに學さんのイメージにぴったりくる。さすがによく選んだな、と思いました。

山本 いや、僕はそんな善人じゃないですよ。

田宮二郎との「丁々発止」の裏側

朝田 一方で、田宮さんの野心に燃えて欲のままに突き進むギラギラとした演技は、実に男らしいものでした。

山本 収録の初日、里見が診ている内科の患者の診察を財前に頼む場面で、検査と治療法をめぐって意見が食い違い、少し興奮気味に対話するシーンがあったんです。そのとき、田宮さんの口調や上から目線が、「ギラギラしている」どころではなく、口論を超えてケンカのようになってしまいました。

ただ、次の回でも同じような対立の場面がありましてね。それで、「このままでは、今度は殴り合いになってしまう」と思った瞬間、「ごめんなさい」と収録を止めていたんです。演技の条件反射のようなものですね。

「何をするんだ、君は今わざと止めたね。どうして余計なことをするんだ」

「このままだと、次回、同じく対立するシーンで殴り合いになると思って」

「そんなことは演出の権限だよ。役者が人の芝居を途中で止めるなんて無礼だ。不愉快だ。僕はもうやれない」

そう言って、田宮さんはセットの陰に椅子を持ち込み、芝居を放り出して座り込んでしまったのです。

次ページ1時間後にセットに戻ってきた田宮二郎
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