業績予想を開示しない会社が激増!? ピークを迎える決算発表に異変
3月期決算企業の決算発表がピークを迎えているが、同時に公表されることが多い新年度業績の会社予想に、今年は“異変”が起きている。
発端となったのは、この3月21日に東京証券取引所が出した「業績予想開示に関する実務上の取扱いの見直し内容について」と題するリリース。その中で東証は、決算短信での会社予想の記載を柔軟化し、第2四半期累計と通期の売上高、営業利益、経常利益、純益、1株当たり純益の予想を書く従来型の「表形式」に加えて、1株当たり純益のみなどの自由記載形式を認めることとした。
また、これまでは会社予想非開示の場合、その理由の明記を求めてきたが、これからは理由を書かなくても良いことになった。一方で、内部的に計画がある場合は開示すべきとしている。会社予想が経営のコミットメントではない場合、そのことを明記することも求めている。
SMBC日興證券・株式調査部の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは、「自由形式では、上場企業間のヨコ比較がしにくくなる。そもそも会社予想が出てこなくなるリスクがある。幅のある予想を出してくる会社が増える可能性がある」と顔をしかめる。コミットメントの明記は、「取引所が上場企業に対して、『情報開示のハードルを上げている』という印象を与えないためではないか」といぶかる。
これに対し、野村総合研究所の大崎貞和主任研究員は、「一つの社会実験として注目している」と語る。「会社予想の開示では、好調か不調かのメッセージが重要。好不調を伝えるのにこんな方法があるなどの創意工夫が自由形式で示されれば、他社の参考になる。幅のある予想を出すのも賛成。ただ、売上高10%、利益30%の増減で修正を出さなければいけない修正ルールに引っかかりやすいのでややこしい。きまじめに通期の予想にこだわらず、四半期先のEPS(1株当たり純益)の開示でもよい。ラフな数字でも好不調が投資家に伝わればよい。EPSならば、売上高や利益が変動しても、そう大きくぶれることもない」と語る。