業績予想を開示しない会社が激増!? ピークを迎える決算発表に異変

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現状でも市況に左右される面が多いなどの理由で、証券会社を中心に非開示会社は存在する。通期予想非開示の社数は、全上場企業のうち、「会社四季報」春号(3月発売)で69社(3ページ目に一覧表)、新春号(昨年12月発売)では94社(4ページ目に一覧表)に上る。

業績予想開示の柔軟化は、「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会」の報告を受けたもの。座長は一橋大学大学院の伊藤邦雄教授。委員には早稲田大学大学院から3人(うち1人はエーザイ執行役員の兼任)、座長を含め一橋大学大学院、青山学院大学大学院、日本証券経済研究所から各2人。関西学院大学、野村資本市場研究所から1人。

同委員会のオブザーバーである東証は、従来型の表形式のみで変更なし、とする「裏バージョンの報告書を作成。自由形式を広く認めると管理が繁雑になるから」(証券関係者)。これには同じくオブザーバーで、柔軟化を推進してきた金融庁が激怒。最終的には表形式と自由形式を認めることで落ち着いた。

もっとも、どうすればいいか迷った場合、後で文句を言われないように、上場会社が東証に「おうかがい」を立てることは日常茶飯事である。今回の柔軟化が決まった経緯で、東証が自由形式に消極的だったことを考えると、上場会社がおうかがいを立てた場合、従来型の表形式を東証の担当者が勧めるのは想像に難くない。

 それでも、これ幸いと業績予想を非開示とする会社が激増する可能性は否定できない。予想の作成作業が省ければ業績発表の迅速化が図れるし、そもそも予想を出していなければ期中に修正発表の必要もないからだ。(ただし、東証の上場規定405条により、予想を出していなくても、前期実績に比べて、売上高で10%、利益で30%変動することが明らかになった時点では、情報開示をしなければならない。)

3月決算会社の決算短信の発表は45日ルールで5月中旬に最終期限が訪れる。日本の上場企業の情報開示が後退するのか、それとも改善するのか。市場関係者は固唾を飲んで“社会実験”の結果を見守っている。

 

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