Netflix《今際の国のアリス》世界1位浮上は"快挙"か"試練"か。日本発では"圧倒的なブランド力"を誇りながら、「初週で1位」獲れない背景を解説
実は『今際の国のアリス3』が初週で1位を逃した背景には、単純な作品力の問題というより、同時期に登場したライバル作品があまりにも強かったという現実があります。
その作品とは、スペイン発のNetflixシリーズ『ビリオネアズ・シェルター』です。
配信開始から2週連続で世界1位を維持し、43の国と地域で首位を獲得する記録も作っています。日本ではランク外だったものの、世界的には圧倒的な人気を集めました。
『イカゲーム』に次ぐ非英語TV番組の歴代2位『ペーパー・ハウス』を手がけた制作チームによる作品とあって、期待も大きく、中身も『ペーパー・ハウス』の騙し合いのエッセンスが取り入れられています。
巨大な防衛シェルターを舞台に、富裕層たちの“生き延び方”を描き、格差社会や権力構造といった世界共通のテーマを軸にしています。スペイン作品特有の情熱と愛の表現が、文化や言語を超えて共感を呼びやすい点も強みと言えるでしょう。
もっとも、その勢いも3週目には4位に落ち着き、世界の視聴トレンドが短期間で入れ替わる現実も浮き彫りになりました。
強いコンテンツが常に新しい作品に追われるという過酷な競争の中で、『今際の国のアリス3』が2週目に1位を奪い返したことは、日本発シリーズとしてのブランド力と継続視聴の強さを証明する結果と言えます。

ビジネス的にもクリエイティブ的にも優れているが…
『今際の国のアリス3』の結果は、Netflixにおける日本発オリジナルの“現在地”を象徴しているように思います。
シリーズ全体で見ると作品としての完成度は高く、ブランド力の強さは圧倒的です。2週目にはついに世界1位を獲得し、その存在感を改めて示しました。一方で、再生数そのものはやや減少し、勢いというよりは“粘り強さ”でトップに立った印象です。
Netflixはここ数年、アジア発のローカルIPを積極的にグローバル展開してきました。その中で『今際の国のアリス』は、日本発の実写シリーズとして最も成功したタイトルの1つであり続けています。日本発のNetflix実写シリーズとして初めてシーズン3まで制作された点でも、節目となる作品です。
制作の観点でも挑戦しています。今回は原作をもとにしたオリジナル脚本で、物語の新しい解釈に踏み込んでいます。さらにTBSグループで組織化された世界水準の制作体制を築く「THE SEVEN」が手がけた作品でもあるのです。数字的にも制作面でも実績を残し、視聴者の支持を得ている点は、ビジネス的には“アリ”と言えるでしょう。
ただし、世界市場で長期的に評価されるためには、もう一段階上の“翻訳可能な普遍性”が求められるのも事実です。
『イカゲーム』が社会風刺と人間心理を融合させて世界を席巻したように、日本のドラマが次に超えるべき壁は「文化的ローカリティ」と「世界的共感」の両立にあるのかもしれません。漫画やアニメ文脈によってローカリティは確立されているものの、作品テーマの軸の見せ方に課題がありそうです。
『今際の国のアリス3』がその手前まで来ているのは確かです。ビジネス的にもクリエイティブ的にも“アリ”でありながら、まだ“完全な勝者”ではないと言えそうです。
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