「自活できる稼ぎを得ることが最優先」が信条で、家賃約4万円の家に20年近く1人で暮らしてきた。料理サイトに節約レシピを投稿するほど料理好きなので食卓は豊かだし、近所づきあいも良好なので、「特に孤独だとは思いません」と語る。

声を上げられない理由
ところで、アヤさんは法制度について一定の知識がありながら、自ら声を上げることはあまりしてこなかったようにもみえる。その理由を、アヤさんはこう語った。
「単発短期で、時間を切り売りするように働いてきました。違法だと思っても、どこかに相談するより別の仕事をすることに時間を使おうと考えたんです」
一方で、最近は変化も感じていた。着替えなども労働時間とみなし、1分単位で計算する企業が増えてきたというのだ。
人手不足の影響もあるが、アヤさんは「これまで声を上げてきてくれた人のおかげ」と感謝する。少しは働きやすくなるかもしれない。そう期待した矢先に見つけたのが、冒頭の音楽祭のスタッフ募集だった。
労働者とフリーランスの違いは先に述べたが、労働基準法上の労働者に当たるかどうかは形式的な契約名ではなく、仕事の実態で判断される。
具体的には、「時間・場所の拘束や指示に対する諾否の自由があったか(指揮監督下の労働だったか)」「報酬が指揮命令下の労働の対価として支払われていたか」などを基にした「使用従属性」の有無だ。
実態は労働者のような使用従属性があるのに、 契約の形式はフリーランスという場合、偽装フリーランスとみなされる可能性が高まる。
労働問題に詳しい脇田滋・龍谷大名誉教授は、アヤさんの働き方は「偽装フリーランスに当たると思われます」したうえで、その理由を次のように説明した。
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