【キーマンズ・インタビュー】人事制度は白けさせるのではなく、流行らせないと意味がない--曽山哲人・サイバーエージェント取締役人事本部長に聞く
「ハードルは低く、競争は厳しく」も重要な組織原則だ。サイバーエージェントの給与制度に年功序列はない。しかし、終身雇用は標榜している。日本型終身雇用ではなく、「実力主義的終身雇用」。優秀人材に報いる給与制度となっている。しかし非優秀層を捨てることはない。会社と考え方と価値観が一緒なら、その社員が安心して働いてもらえるように守る。組織としての成果が出せなければ意味がない。それが実力主義的終身雇用だ。
--役員を定期的に交代させる制度もあると聞きました。
サイバーエージェントの役員は8名。08年から2年間の役員任期ごとに必ず2名ずつ交代させることを決めており、社内では「CA8」と呼んでいる。社外に説明する時に私は「内閣改造型役員交代制度」と言う。役員の降格人事ではなく、内閣の改造のような交代制度であることを理解してもらうためだ。実際にこれまで2回、4名の役員が交代している。
この役員制度がスタートしたきっかけは、ある人事制度を社長の藤田に提言したことだ。当時の私はGEやP&Gの人事制度を研究しており、業績の悪いマネージャーの下から1割を降格する人事制度を導入しようとしていた。
この制度を藤田に話したところ、「いい提案かもしれないが、これじゃ現場は“白ける”でしょ」と彼は言い、そしてマネージャーの前に役員交代制度を始めようと決めた。 今年も9月に交代する役員が決まり、10月に発表される予定だ。CA8は社内で盛り上がるイベント。「曽山さん、今年大丈夫ですか?」と話しかける若手社員は多い。
--藤田社長の「白ける」という言葉は、一般企業の社員が人事制度に抱きがちな感情かもしれませんね。
そのとおり。藤田から「白ける」という言葉を聞いて、自分が「人事のワナ」にはまっていることに気づいた。いい内容でも運用で白けさせては無意味だ。それ以降、新しい人事制度を始める時は「白けのイメトレ」を何度もする。すべての人事制度は白けさせるのではなく、流行らせないと意味がない。
--「あした会議」は役員間で競う事業企画のバトルだそうですね。
新しいビジネスモデルを作っていくメカニズムは2つある。1つは先ほど話した「ジギョつく」だ。現場がアイデアを出すが、経営経験がないので実際に事業化されるものはそれほど多くない。もうひとつが、新規事業案を役員間で対戦し、実施する事業を決める「あした会議」だ。