【キーマンズ・インタビュー】人事制度は白けさせるのではなく、流行らせないと意味がない--曽山哲人・サイバーエージェント取締役人事本部長に聞く
このコンテストを発案した社長の藤田(晋氏)も、私が2005年7月に人事本部長になった時には、「応募数が増えないならやめてしまおうか」と話していた。私自身も、営業部門統括をしていた時には、「仕事が忙しいから応募しない」と考えていた。
しかし人事本部長として主催する側に立ってみると、何か新しいことへの挑戦を社員に促すという点では非常に意義のある制度であり、何とか活性化させたいと考え直した。そのためには、とにかく応募件数を増やさなければならない。そこで取り組んだのが、“社内営業”だった。当時の人事部は6、7名だったが、みんなで社員1人ひとりの元を訪れ、「ジギョつくに応募しませんか」と声をかけて参加を促した。この声かけは、想像以上の効果があり、応募件数の増加につながった。
しかし声かけだけでは1回限りの応募だ。「次も出そう」と思わない。そこで「これは応募すればするほど自分のためになる」と感じてもらえる仕掛けを考え抜いた。例えば、勉強会を開いて、新規事業の立ち上げに伴う面白さを役員に講義してもらったり、過去にグランプリを獲得した社員に体験談を語ってもらったり。
そして審査は役員全員が担当して評価する。さらに「ジギョつく」が終わった後に、「なぜグランプリを獲得できなかったのか」を応募者全員に口頭でフィードバックする。「応募するたびにフィードバックされる内容が変わってくるので、そのプロセスを通じて自分の成長を実感する。このように学習と成長の機会を提供することで、徐々にリピーターが増えていった。
この種の制度は他社でもあるかもしれないが、その多くはかなり堅苦しい形式の応募書類の提出を求められ、フラッシュアイデアレベルでは応募しづらいものになっていると思う。弊社の応募形式は、1提案につきExcel1行分だ。こうした応募しやすさの工夫も非常に大事なことだ。
--曽山さんが考える人事の役割を教えてください。
私は05年に人事本部長になったが、それまでの人事は、機能人事、事務屋人事だった。私が目指したのは、「業績に貢献する人事」だ。人事が業績に貢献するために何をすればいいか。経営と現場をつなげばいい。経営の考えを「わかりやすく」現場に伝え、現場の声から「本質を見抜いて」経営に提言するコミュニケーション・エンジンが人事の役割だ。