老化のカギとなる体の中に存在する「組織」の正体…知られざる細胞の主役「ミトコンドリア」を徹底解説

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一方、アポトーシスは、①がん化してしまった細胞をはじめ、病原体を含む細胞を取り除く機能、②生物が成長していくために、生命の決まった時期に、決まった場所の細胞の死が導かれる「プログラムされた細胞死」を発現させる機能、③古くなった細胞を新しい細胞に置き換える機能、という3つの機能を果たします。

オタマジャクシの尻尾がなくなる訳

たとえば、オタマジャクシがカエルになる時、尻尾がなくなりますが、これは尻尾が切れるのではなく、尻尾の部分にあった細胞が自然死して消滅します。

これは②の機能に該当します。人間の指が生まれるのも同様です。胎児の手には指ができていません。指が発現するのは、新しい指の部分が生えてくるのではなく、指になる部分以外の細胞(指の間の細胞)が死ぬことによって、指が発現します。

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また、アポトーシスの場合、死んだ細胞はあらかじめの計画通り、マクロファージという免疫細胞に食べられてしまうので、死の痕跡が残りません。

すなわち、アポトーシスとは、ある部分の細胞の死を誘導することで、より活発な生命活動へと飛躍するためのものと解釈することができます。これは生命にとって非常に重要な飛躍です。

ミトコンドリアは、このアポトーシスを引き起こすさまざまな物質を常に蓄えていて、必要なときに、必要な手順で発動させ、アポトーシスを引き起こします。

つまり、ミトコンドリアがなければ、カエルはオタマジャクシのような尾が生えたままであり、人間の手には指ができないことになります。

このようにミトコンドリアは、エネルギーの製造だけでなく、生物がより活発に生きるためにも欠かせない存在です。

武本 重毅 聚楽内科クリニック院長

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たけもとしげき / Shigeki Takemoto

1960年生まれ。熊本大学医学部を卒業し、熊本大学第二内科に入局。熊本大学大学院医学研究科(脳・免疫統合科学系独立専攻免疫病態学講座)博士課程修了後、1996年から1999年まで、アメリカの国立衛生研究所の国立癌研究所にて客員研究員としてウイルス発がん・腫瘍免疫を学ぶ。帰国後、高知大学医学部附属病院第三内科学内講師、2005年より国立病院機構熊本医療センター統括診療部血液内科医長等を歴任し、2011年熊本大学大学院医学教育部臨床国際協力学分野客員准教授に。2017年4月より現職。新型コロナウイルスパンデミックを機に、「老化を治し、若返っていく」治療に取り組み、アンチエイジングの考えを毎日の治療に取り入れ「アンチエイジング3本の矢Ⓡ」を実施している。著書に『老化は「治る」 - 健康寿命を延ばす実践的アンチエイジング論 -』(ワニブックス【PLUS】新書)。

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