石破首相の辞意表明で株価が上がる皮肉、最高値の日米株価に潜む「2つのトランプリスク」

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さらに製造業を立て直すという大目標に向けて、半導体などのハイテク分野を強化し、造船業を再生し、レアアースの調達にも万全を期す。そのために必要となる資金は、関税を脅しに使って日本や韓国などの外国勢に出させる。そのうえで為替はドル安に誘導し、FRB(連邦準備制度理事会)には金利を下げさせたい……。いやはや、あまりにも野心的すぎるのである。

市場はFRBが独立性を失うリスクを織り込んでいない

特に心配なのがFRBに対する介入だ。8月25日にはリサ・クック理事を解任したが、これは111年にわたるFRBの歴史上初めてのこと。当日の株価はあまり反応しなかったけれども、これは恐るべきことではないだろうか。

8月28日のウォール・ストリート・ジャーナル紙で、グレッグ・イップ記者は”Get Ready for the End of Fed Independence”(FRBの独立性の終わりに備えよ)と警鐘を鳴らしている。いわく、「FRBが1951年に獲得した独立性が終焉を迎えるかもしれない。ところが投資家はFRBが政治化されるリスクを織り込んでいない。だが今後、(パウエル議長が任期を終える)9カ月間のどこかで、FRBがトランプ氏の意向に沿って金利を決めるようになることを想定すべきではないか」

あんまりいい例ではないけれども、われわれはトルコにおいてたびたび中央銀行総裁が解任されることを知っている。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が金融緩和を求めるからだが、それでインフレが加速してもトルコ・リラが下落しても、その影響は限定的である。「トルコはそういう国だ」と受け止められているし、世界経済に占める規模もそれほど大きくないからである。

ところがアメリカにおいて中央銀行の独立性が損なわれ、FRBがトランプ政権の言いなりになってしまったらどうなるだろう。端的に言えば、ドルの金利メカニズムが信用できなくなってしまう。まずはインフレになる確率が上昇するだろうが、それ以上に怖いのは、米国債が信用を失うとか、ドルが世界の基軸通貨でなくなってしまうことであろう。

これは国際金融危機を招きかねないシナリオだが、今のところ市場は無視を決め込んでいる様子である。こういう時によくある話で、「起きてほしくないことは考えない」ことにしているのか、あるいは目先の利下げを期待して、「トランプ氏の圧力は結構なこと」とタカをくくっているのかもしれない。

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