QOL爆アゲ! 成長は目指さずイヤな人とも関わらず「幸せに生きる」ことだけを考える《常識外れの起業スタイル》の始め方

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一日でも早く「黒字化する=食べていけるようになる」ことがライフスタイル起業の大前提であり、そのためには「起業前の市場調査・コスト計算・事業計画の作成をしっかり行う」のではなく、「可能な限り低投資で始められるビジネスを探し、それを実現するための条件を整える」ほうが重要であることを、私たちは見落としてしまっているのです。

次に、初期投資費用を下げて可能な限り早く黒字化を実現することで、「事業を安定させる(=生活を安定させる)ために必要なモノ・コト」に再投資していくサイクルを素早く実行することが可能になります。

例えばライフスタイル企業家の本場であるオセアニア地域のサーフショップの場合、まず重視すべきは人通りの良い目立つ場所=家賃が高い綺麗な店舗を持つことではなく、「今買ったサーフボードを試せる、海に隣接した場所」=家賃が安くサーフィンを楽しめる利便性の高い場所に店舗を構えます。

その店舗も、おしゃれな内装を目指す前に、店主おすすめのサーフボードの数を増やしていく、ボードのカスタムのための作業場を充実させることが優先され、黒字化して余剰が生まれてからサーファーたちが集まってトークを楽しめるテーブルセットとコーヒーメーカー一式をそろえるなど、細かな作り込みをしていく(いきなりお金をかけて完璧なお店を目指さない)ことになります。

実際、オーストラリアのサーフショップを調査したWallisら(2020)は、店主たちが経営に際して重視する意思決定基準を“Just want to surf, make boards and party”(ただサーフィンして、ボードを作って、パーティーがしたいだけ)という論文タイトルで端的に表現しています。

お客さま=サーファーを集めるお店に必要なことは、一緒にサーフィンを楽しめる立地にお店を構え、サーフボードをメンテナンスしたりカスタマイズする作業場と、夜になれば一緒にパーティーを楽しめるスペースを用意することが最優先であると、店主たちは「すでに理解している」のです。

そこそこ稼いだら、それ以上は求めない

さて多くの先行研究が、ライフスタイル企業家は低投資の起業でいち早く黒字化し、お客さまや受注も増え、売り上げも拡大し始めたところで、「これくらいで十分」と意図的に仕事をセーブすることを指摘しています。

実際、私がこれまでに観察してきた例としては、「一人で手に余る案件は受けず、その案件に対応可能な友人に紹介するプログラマーやデザイナー」「家族が生活し、お店を維持するのに十分な稼ぎが得られる固定客がついた時点で、メニューを減らすだけでなく定休日も増やした居酒屋」「常連さんと林道をサイクリングすることを優先した不定期営業の自転車店」といった方々が存在しました。

稼げる時に最大限稼げ! 成長するために(リスクをとって)投資しろ! という起業・経営の一般的な常識から考えると、ライフスタイル企業家のこの行動は不可解です。

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