キーエンスで、上司が部下に「さん付け」「です、ます口調」で話すことを徹底する合理的な理由

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私はキーエンス時代、合計5回の営業成績全社1位を獲得しましたが、そのうち3期連続となる3回は、後輩や同僚に自分のテクニックや経験を伝えることに力を入れ始めていた時期でした。そこには、あるきっかけがありました。

キーエンスでは、個人の業績が表彰されはするものの、給料にはまったく反映されません。

給料はあくまで会社全体の業績と社員数に連動するので、ある年、自分自身は大変な努力をして全社1位を取ったにもかかわらず、ちょうど会社の社員一人当たりの業績が落ちていた時期だったため給料は前年より減ってしまいました。

その結果、

「自分だけ業績を伸ばしても給料は上がらない。経験や技術を伝えて、自分以外の人たちも『売れる』ようにしなければ」という意識になったのです。

また私自身、誰かの役に立つことがうれしいという感覚も強くありました。

自分の経験を資料にまとめた先にある「気づき」

その頃の私はちょうど10年ほどの営業経験を積み、全国1位にも輝き、「営業パーソンとしてほとんどのことはできるようになった」と感じていました。

しかし、後輩や同僚に自分のテクニックを伝えるため資料をまとめていると、「ここの根拠が曖昧だな」「この部分は自分自身でもやり方がブレているかも」といったことに気付かされたのです。

商品ごとの提案のやり方や、取引先企業ごとの詳細な攻略法。「相手がこう発言したら、こう返せばいい」という対応をまとめたフローチャート……伝えるべき内容を見やすい資料に落とし込むことで、自分の経験やテクニックを整理することができ、それぞれのテクニックの再現性を高めることができました。

「後輩や部下、同僚に伝える」という作業を通じて、愛されテクを磨き上げることができたことで、自身も営業成績トップという結果を残すことになります。

部下や後輩の指導はたしかに大きな負担ですが、間違いなく自分自身をさらに成長させてくれます。仮に上司というポジションでなくても、ぜひ周囲の人たちに自分の経験や技術を伝えていただきたいと思います。

では、部下との向き合い方を学んでいきましょう。まずは「基本のキ」。部下と話すときは、必ず名前に「さん」を付け、「です、ます」口調で話すようにします。

部下との関係が深まると、ついつい「○○ちゃん、あの件どうなった?」なんて親しげに声をかけてしまいがちですが、これはNG。あなたにとっては親愛の表現でも、相手は丁寧語で返さざるを得ないわけですから、結果的に「自分が上、相手が下」という上下関係を固定化することになってしまいます。

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