そう、このスイス・グランドトレインツアーは、一部の区間を除けば、ほぼ「一筆書き」で周遊できる。乗車区間をUターンする必要も、魅力的でない路線に乗る必要もない。スイス連邦鉄道がおすすめする列車だけで効率よく旅することが可能なのだ。
では、実際の乗り心地や風景はどうなのか。今回は8路線のうち、スイス国土の南半分にある山岳・湖水地帯を走る4路線の、さらにその一部に乗車してみた。
まずは、モントルーとインターラーケンを結ぶゴールデンパス・エクスプレスから。高級さと素朴さをあわせもった高原リゾートであるグシュタードから、山と湖に囲まれたインターラーケンまで乗車する。

特等席からの見晴らしは?
グランドトレインツアーの座席は通常、2等席(セカンドクラス)と1等席(ファーストクラス)しかない。だが、ゴールデンパス・エクスプレスには特等席(プレステージクラス)があり、筆者が乗った列車には先頭車両と最後尾の車両に9席ずつ設けられていた。
筆者も特等席に乗ってみる。しかも、確保できた席は先頭車両の一番前だ。車窓からだけでなく、運転席越しの風景も楽しめると期待は高まったが、なんと先頭に電気機関車が接続されているため、前が見えない。
ガイドに聞くと、急勾配の山岳地帯は列車だけでは登りきれず、電気機関車の動力が必要になるとのこと。乗車したグシュタード駅から30分ほどで着くツヴァイジンメン駅で電気機関車が切り離されるまで、前方の景色はおあずけとなった。
とはいえ、大きな窓のほかに天窓もあるパノラマカーなので、景色も開放感も抜群だ。夏でも雪に覆われたアルプスの山並み。イタリアカサマツなどの針葉樹の森と牧草。家々の屋根と壁もブラウン系のアースカラーに統一されている。
電気機関車が切り離されるツヴァイジンメン駅からしばらくは、勾配がゆるやかな丘陵地帯を走る。やがて左側の車窓から大きな湖が見えてきた。終点のインターラーケンの西に位置するトゥーン湖だ。
雪を被った山の青と白。森と牧草の緑。青空と湖の水色。スイスの田舎の風景すべてを2時間弱の乗車で堪能した。
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