東レを支える“繊維力” 斜陽事業が大復活!
ユニクロとの成功が波及 新興国向けにも種まく
そんな繊維事業の大復活を象徴するのは、ユニクロを運営するファーストリテイリングとの連携、とりわけ「ヒートテック」の成功だ。
水分を吸収すると発熱する繊維を使ったヒートテック。03年の投入以降も毎年性能を進化させることで、薄くて暖かいと日本人の冬の肌着の定番となった。今では1シーズンに1億枚を販売するお化け商品に育っている。
この成功は、ユニクロの“お相伴”にあずかったものではない。コツコツと繊維事業の構造改革を続けてきた東レの努力の賜物でもある。
00年以降、東レは従来の糸売りだけに加え、テキスタイル(生地)部門の体制を強化、07年には縫製品事業部門も新設している。当初、ヒートテックでユニクロが求めたのは発熱機能、保温性。その後、ストレッチ性や吸汗速乾性なども加わった。そうした多様な要望に応えられたのは、東レが製糸から機織り、染色、縫製まで一気通貫で担う体制と技術を構築していたからだ。
たとえば、07年にヒートテックは3種類から4種類の繊維を用いるように改良された。染まり方の異なる4種の化学繊維をムラなく均一に染め上げることは、当時、繊維業界では不可能といわれていた。試行錯誤の末に東レが不可能を可能にできたのは、糸から染色まで自社で手掛けていたことが大きい。
ヒートテックの成功は2社の事業提携に発展。製造と販売が直接タッグを組む体制で、夏向けの機能性肌着「シルキードライ」や超軽量化を実現した「新ウルトラライトダウン」など、次々とヒット商品を生み出している。ユニクロの柳井正社長は、「東レには長年の技術の積み上げがあり、群を抜いている。提携は必然だった」と振り返る。