東レを支える“繊維力” 斜陽事業が大復活!
近年、東レの元にはアパレル業界から次々と共同開発の要望が舞い込んでいる。着心地のよいダウンジャケットを、との大手アパレルの要望には、中綿が飛び出にくい特殊な縫製技術を提案し、ヒットにつなげている。差別化商品を欲するアパレル各社にとって、欠かせないパートナーとして認知されるようになった。
提案型の共同開発は、産業向けの繊維事業でも実を結びつつある。自動車のハンドルの小型化に苦慮していた自動車メーカーには、平らな糸を横に編んだ薄型エアバッグを提案。そのほかカーシートやカーペットなどのインテリア用品でも、テキスタイルや縫製まで手掛ける案件が増えている。
11年の東レの合繊生産量は、インドや中国の企業に及ばず世界10位にすぎないが、売上金額ではトップに立つ。糸売りにとどまらず、テキスタイルや縫製など、繊維素材を加工し、付加価値を高めることを実現しているからだ。
東レの繊維事業に対し、市場の見方も変化した。今では「東レの強みは繊維事業を深掘りし、糸売りなど素材販売にとどまりやすい業界の中で、高い技術が求められる縫製品も事業に組み込んでいること」(UBS証券の高橋昌平アナリスト)と評価する声が大勢を占めている。
入社以来40年にわたり繊維事業に携わってきた田中英造繊維事業本部長は、「グローバルに見れば、繊維事業は成長産業。まだまだ成長の余地はある」と話す。