東レを支える“繊維力” 斜陽事業が大復活!
新興国の生活水準が向上すれば、紙おむつなど衛生商品の消費も急増し不織布の需要が高まるほか、高い発色性や機能性を有した衣料用繊維のニーズも増える。これらを取り込むために、昨年には中国国内向け生産工場を拡大、さらにインドに事務所も新設し情報収集に着手した。
すでにこのアジア深耕戦略には芽が出始めている。赤字が続いていた中国国内向け繊維部門は、高付加価値素材の需要の高まりを受け、10年3月期に黒字化を達成した。今後はブラジルや東欧などへの進出も視野に入れており、繊維事業は第二の黄金期を迎えようとしている。
非繊維も根本は繊維 技術、社風、必勝パターン
11年2月、東レは野心的な中期計画を発表した。20年前後に現在の2倍超となる3000億円の営業利益を目指すと宣言したのだ。
ここでは、繊維事業は安定収益を稼ぐ基幹事業として位置づける。成長エンジンと期待するのは、市場からの注目も高い医療分野、ディスプレーや、処理膜、炭素繊維など非繊維事業だ。
ただし、これらは“非繊維”事業と分類してはいるものの、「実はすべての事業の根底には繊維の技術がある」(日覺昭廣社長)。
たとえば、医療分野の人工腎臓や血液透析器には中空糸の技術が活用されている。医薬品事業では、合繊技術の一つという有機合成化学が応用できる創薬に特化し、販売などは製薬メーカーに委託している。