北は北海道、南は沖縄まで…建設会社の「献血イベント」に1000人以上が集まる理由

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もちろん、これは先方の思いもあることですから、正弘さんの思い描いたようにはなりませんでした。しかし、本物の優しさをもっている人でなければ、ここまで他人に親身になることはできないと私は思います。

ここに、亡くなった社員の遺児に向けて会社がつくった、在りし日のお父さんの様子をおさめた冊子があります。私はこんなにも温かい「お別れのアルバム」をいまだかつて見たことがありません。

故人にあてた「ご報告」

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そこには正弘さんの故人にあてた「ご報告」と、家族写真がのせられていました。正弘さんは、社員が亡くなった直後の夏休みに、遺児たちを連れてディズニーランドに行っています。家族写真はそのときに撮ったものです。写真には少し寂しそうに微笑む奥さんと、日焼けした2人の子どもたちが写っています。

「大丈夫。君がいなくなっても、家族はちゃんと楽しい夏休みをすごせたよ。家族の面倒は俺が見るから安心しろ」

正弘さんの声が聞こえてくるようでした。

写真の横に添えられた正弘さんの「ご報告」を紹介します。こんなに温かい会社で働けたら、社員たちも本望でしょう。

「ご報告」
君の葬儀の後、お子様達が教えてくれました。
「お父さんは、夏休みまでに今のお仕事を終わらせて、夏休みにどこかへ連れていく、と約束していた」と……。
君はどこに連れて行こうと思っていたのでしょうか?
きっと何か計画していたのでしょうね。
君の無念さを痛烈に感じました。
Y君、K君(子どもたちの名前)と行き先を相談しました。
そして「ディズニーランド」に決めました。
「お父さんから頼まれていたから、社長が代わって約束を守るよ」と言葉を付け加えて……。
君の「四十九日」そして「新盆」を経て、8月19日から2日間、
「ディズニーランド」と「ディズニーシー」にご招待しました。
お子様は大変喜んでくれて、お礼の電話を頂きました。
「社長、すごく楽しい。次は社長も連れて行ってあげるね」と言ってくれました。
奥様からも「悲しいだけの夏休みにならなくてよかった」とお礼の連絡をいただきました。本当に嬉しかった
これからも君の代わりに、少しでも力になれるよう微力ながら努力します。
また、「隂山建設(株)」から、Y君とK君が就職するまで、
君の代わりとなって、一定額の育児資金を支給し続けることになっています。
社員一丸となって、君のお子達を応援していきます。
I君、たまには夢で逢いましょう。
取り急ぎ、ご報告まで……。
隂山正弘
坂本 光司 経営学者、人を大切にする経営学会会長

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さかもと こうじ / Koji Sakamoto

1970年法政大学経営学部卒業、1992年浜松大学経営情報学部教授・同大学院教授などを経て、2008年から法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科兼担教授、法政大学大学院政策創造研究科教授を務めた。全国各地の中小企業や商店街、自治体などを回り、経営革新支援やセミナー講師などを務めている。

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