北は北海道、南は沖縄まで…建設会社の「献血イベント」に1000人以上が集まる理由
彼らはそれからなんと1年以上、熊本に滞在し、建物の復旧工事建設の手伝いなどをして復興に力をつくしたのです。災害が起きるたびに、隂山建設の社員は協力業者とともにボランティアに駆けつけているのです。建築の技術をもつプロ中のプロの応援は、被災地で大きな力になっています。
社員が急死、残された家族に社長がしたことは
「恩返し」「恩送り」は、社会に対してだけではありません。会社が危機に瀕したとき1人として逃げ出さなかった社員に対する「ご恩返し」も、忘れてはいませんでした。
社員のために、法律で定められた以上の、いわば「法定外福利厚生」とでもいうべき数々の制度をとりいれているのもそのためです。たとえば隂山建設では、社員が亡くなったとき、その子どもを支援する「育英会」制度を設けています。大学生なら2万円、高校生なら1万円、中学生以下は一律5000円。月々決まったお金を遺児に支給し、入学時にも祝い金を渡します。「本物の〝足長おじさん〞になりたい」という正弘さんの肝入りの制度ですが、民間の奨学金制度も顔負けの充実ぶりだと、私は思います。
そして残念なことですが、この育英制度がさっそく役に立つことが起こってしまいました。34歳という若さで、ある社員が急死したのです。前日まで会社のレクリエーションで、元気に野球を楽しんでいた前途有望な社員でした。
彼にはまだ若い奥さんと小1、幼稚園児の2人の子どもがいました。正弘さんの優しさが本物だと私が確信したのは、彼のこんな発言を聞いたときでした。
「葬式のとき、僕は勝手に心に決めたんですよ。亡くなった社員の2人の子どもは私の養子にしようと。私には3人子どもがいますが、あと2人くらい増えたって、何とかなる。そして、まだ若い奥さんはうちで雇って、いい人がいたら、再婚してもらえばいいんじゃないか。そうしたら、もう一度幸せがつかめるだろうと思ったんです」
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