うつ病、アレルギー性鼻炎の症状が改善…中国の長寿の村で発見、研究者が注目する乳酸菌とは?――腸内細菌研究の最前線《医師が解説》

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それは中国の南部に位置する広西チワン族自治区の「長寿の村」として知られる巴馬(バマ)で発見された腸内細菌(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis A6:BBA6=ビフィドバクテリウム・アニマリス subsp. ラクティス)を用いたものだ。

本稿では詳述しないが、基礎研究のレベルでは、BBA6は腸と脳をつなぐ「腸内細菌—脳軸」を介して作用することが知られていた。今回、紹介する2つの研究は、人に用いた場合の効果を調べたものである。

BBA6投与で「うつ」は改善するか?

最初の研究は、中国の総合科学誌『Science Bulletin』誌オンライン版に4月21日に発表された。この臨床試験では、107人のうつ病患者がランダムに2群に分けられ、8週間にわたってBBA6、あるいはプラセボ(偽薬)が投与された。

データは、便秘がある人とない人に分けて解析。すると便秘がない人では効果に差が見られなかったが、便秘がある人ではBBA6を飲んだグループのほうが、うつ症状も便秘も改善していた。

具体的には、うつ病の重症度を測る指標(ハミルトンうつ病評価尺度:HAMD-17※点数が低いほうが正常)が、BBA6を飲んだ人では平均9.48点、プラセボでは12.77点となり、その差は統計的に有意だった。

HAMD-17の3点の差は、夜眠れなかった人が少し眠れるようになったり、食欲や気分が少し回復して家事や散歩ができるようになったりする程度の改善を意味する。

さらに該当する被験者の腸内細菌叢を調べると、乳酸菌やビフィズス菌が増えていることが確認された。血液や便では「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが増え、気分を悪化させる物質キヌレニンが減っていた。

研究チームは、「BBA6はトリプトファン代謝を調整し、セロトニンを作りやすくし、キヌレニンを抑える働きをしている」と考察している。

うつ病と便秘の関連は、以前から注目されてきた。全米健康・栄養調査(NHANES)の解析によると、うつ病患者では慢性的な下痢や便秘を伴う頻度が高いことが明らかになっている。

ただ、これまでは両者の関係がはっきりしなかった。うつ病だから便秘になるのか、便秘だからうつ病になるのか、わからなかったのだ。今回の研究では、BBA6の投与で便秘が改善されたとともに、うつ症状も改善した。

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