夢だった北欧移住を叶え3年半、改めて紐解く心地よさの理由。日本の日常にもひとときの"余白"を。「週末北欧部 chika」漫画とエッセー

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もちろん、人口密度の違う日本で同じ静けさを求めるのは簡単ではない。

それでも東京で暮らしていた時には、フィンランド旅で知った「自分にとって心地よい音の量」に思いを寄せながら暮らした。ノイズキャンセリングのイヤホンで街の雑音をやわらげたり、人の少ない朝や夜に水辺を散歩をしたり、会話のペースが合う友人と過ごしたり。

「しばらくこの景色を眺めていよう」と、コーヒーを片手に沈黙を言葉にして共有するのもいい。そんな小さな工夫で、音や情報に押し流されず「今、この瞬間」を東京でも味わえるようになった。

友人に教わった「日本らしい余白の持ち方」

静けさが心を落ち着かせる理由を調べてみると、いくつかのことがわかった。

騒音が少ないと体が安心モードに切り替わり、呼吸や鼓動がゆっくり整うこと。脳に入ってくる情報が減り、余裕が生まれること。沈黙を肯定できる場では、会話のプレッシャーが減り心が軽くなること。

静けさとは、ただの「無音」ではなく、体と心が深呼吸するために必要な余白だったのだ。

ちなみに、フィンランド人の友人が初めて東京を訪れたとき、こんなことを言っていた。

「あんなに人がいるのに、電車の中はすごく静かだった。みんな携帯を見ていたけれど、それは他人の時間やパーソナルスペースを邪魔しないようにしているみたいで、すごく心地よかった」

その言葉に、私は自分では気づかなかった「日本らしい余白の持ち方」も改めて学んだ気がした。

今までは静けさをただの無音だと思っていたけれど、実はそこには安心や豊かさが潜んでいる。自分にとっての「心地よい音の量」を知ることは、忙しない日々の中に、自分のペースを取り戻すことなのかもしれない。

週末北欧部 chika アーティスト

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しゅうまつほくおうぶちか / Shumatsu Hokuobu chika

北欧好きをこじらせてしまった元会社員。大阪府出身。

フィンランドが好き過ぎて13年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。会社員生活のかたわら寿司職人の修業を行い、2022年4月より寿司職人として移住の夢を叶えたが、職場の倒産により個人事業主に転身。

モットーは「とりあえずやってみる」。そんなこじらせライフをSNSアカウント『週末北欧部』にて発信中。

好きなものは水辺、ねこ、酒、1人旅。

著書に『北欧こじらせ日記』『Tasty!日刊ごちそう通信』(世界文化社)、『マイフィンランドルーティン100』(ワニブックス)、『世界ともだち部』(講談社)、『フィンランドくらしのレッスン』(集英社)、『北欧をこじらせた私のサバイバル英会話』(KADOKAWA)など。

X(旧Twitter) @cicasca  Instagram @cicasca 

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