「面白かった」しか言えない人へ…哲学者が教える「感想を自分の言葉できちんと"言語化"できるようにする」ためのコツ

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このカギ括弧テクニックは、自分なりの辞書をつくるような営みでもあります。

「自分にとっての○○とは何か」を意識的に言語化していくと、それまで曖昧に感じていた価値観や好みがはっきりと輪郭を持ち、他者に説明しやすくなっていきます。

「ハチワレ」のカギ括弧を使う効果

これは余談ですが、ここでお伝えしたカギ括弧テクニックを多用している例として、ナガノによるマンガ『ちいかわ』に登場するハチワレを挙げることができます。

ハチワレは青いネコの姿をした同作の大人気キャラクターですが、主人公のちいかわとのほのぼのとした日常が描かれるとき、ハチワレの吹き出しにはカギ括弧が頻繁に使用されています。

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「お出汁」とか、「どんぐり」とか、カギ括弧でくくられる単語はまったく特別なものではありません。しかし、ハチワレがわざわざカギ括弧を使ってその名前を「呼ぶ」ことで、そこには独特の「味」が生まれてきます。

すると、そこで名指されている「お出汁」や「どんぐり」といったものもなんだか特別なもののように見えてきて、他のノーマルなお出汁やどんぐりとは区別された概念として立ち上がってくるようです。

マンガ的な演出としては、私たちにとっては当たり前のものでも、まだそんなに物を知らないハチワレたちにとっては、日々新しくて特別な出会いにあふれていることを強調するような効果を持っていると思います。

特別感を持たせて、そのものをもっと深く、丁寧に「味わう」。カギ括弧をあえてつけてみることにはそういう効果もあるのです。

田村 正資 哲学者

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たむら ただし / Tadashi Tamura

1992年、東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は現象学(メルロ゠ポンティ)。開成高校クイズ研究部リーダーとして、伊沢拓司と第30回高校生クイズ優勝(2010年)。現在は株式会社batonで新規事業開発を手掛ける。これまでにYouTubeチャンネル「QuizKnockと学ぼう」やECサイト「QurioStore」の立ち上げに携わった。新規事業開発のかたわら、哲学研究と作家活動も継続。論文執筆のほか、『ユリイカ』『群像』に論考や批評を寄稿・連載するなど文芸誌でも活躍している。著書に『問いが世界をつくりだす メルロ゠ポンティ 曖昧な世界の存在論』(青土社)、『独自性のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)。

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