「面白かった」しか言えない人へ…哲学者が教える「感想を自分の言葉できちんと"言語化"できるようにする」ためのコツ

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「このシーンは面白い」「あ、この表現はかっこいい」と感じるツボは十人十色です。世間の評判や市場のニーズを気にしすぎると、自分自身が本当に心を動かされたポイントが埋もれてしまいます。

たとえば、感動的なストーリーが評判の映画でも、あなたはむしろ、主人公の心情とリンクして描かれている空模様や電信柱の描写という部分に惹かれているかもしれません。

「空模様や電信柱に自然と惹かれる」という感覚こそが、あなたにとっての「自己満足」であり、そこを大事にするからこそ独自のアイデアを発展させていくことができるのです。

あえて世の中の大多数が注目する面白さよりも、自分の気になる点にフォーカスすることで、あなたならではの表現が生まれるきっかけになります。

心が動かされたポイントを強調して、「これは○○だ!」と言い切ってみる

次に、自分が心を動かされたポイントを「これは○○だ!」というかたちではっきりと言い切ってみましょう。

たとえば、映画の批評なら「この作品における最大の魅力は、夜の静けさを描いたシーンだ!」と断言し、そのシーンがいかに魅力的かを力説してみる。そうすると、あなたの頭の中で「なぜそう思うのか?」という追加の思考が自然と生まれ、そのポイントをさらに補強する工夫や、説得力を増すための材料を探し始めます。

こうした言い切りは、SNSでも簡単に始められます。

「なんかいいな」と曖昧に表現するのではなく、「ここが最高だから、この作品は○○に違いない」と書き込むだけで、自分の内面にある抽象的な感情が整理され、言葉としての強度を持ち始めます。

もちろん、SNSの投稿で、表現として言い切ってみたあとに「やっぱりしっくりこないな」と感じたら撤回しても構いません。あえて一度言い切ることで、自分がそこに自信を持ってさらに思考を積み重ねていくことができそうか、それとも見当違いだったのかを判断する感覚が敏感になっていきます。

こうした訓練を積み重ねて言い切りの精度を上げていくことが、新しいアイデアや表現に近づいていくための大切なステップになります。

感想を書くときには、点ではなく線に

このようにして見出してきた自分なりの視点を「点」として押し出していくのはもったいないことです。

「このシーンの夜の静けさが素敵だった」と一言だけで終わらせるのではなく、どういう経緯で作品がその静けさにたどり着いたのか、その静けさによって物語全体にどんな雰囲気がもたらされたのか、といったことをさらに考えてみるのです。

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