「競争」から降りて自分らしく生きるにはどうすればいいか?――哲学者が教える「人と争う心が自分を壊す理由」

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「列」において自分の価値は他人との相対的な位置で決まります。つまり、自分よりも前にどれくらいの人がいるか、あるいは、自分よりもうしろにどれくらいの人がいるか、ということが自分の価値を示す指標になるのです。

自分が最後尾だったら、と想像する。耐えられない。最後尾なら、列に並ぶ意味はない。後ろに人がいなければ、列に価値はない。
中村文則『列』
(画像:『この時代を生きるための 独自性のつくり方』より)

私たちは自分が最後尾ではないこと、自分よりもうしろにまだ誰かが控えていることを確認しながらでなければ、安心して競争や比較に入ることはできません。

だとすれば、他人本位で抽象的なかたちでしか自分の価値が測れないこのような競争や比較から離れてしまえばいい。俺はひとりで気楽にやろう。そういうふうに考えたとして、そこから始まるのは、また新しい「列」なのかもしれません。

「列の並び直し」はどこでも起こる

このような「列の並び直し」は社会のいたるところで起こっています。

ひとつの尺度で誰かを評価する価値観が支配的なものとなり、その価値観の中で勝ち負けや順位が動かしがたいものとなったとき、誰かが逆張りをして「そんな価値観に縛られないことこそが大事」と主張し始めます。

そうすると今度は、いかに自分が最初の価値観に縛られていないかをアピールする競争が始まる。

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