外部環境の変化も決断を後押しした。2017年から東京都が受動喫煙対策を本格化させ、時代が「禁煙」へと傾きはじめていたのだ。
けれど現実は、客の多くが喫煙者。当然、営業部門からは反対の声が上がった。
「売上が相当減る」
「競合の居酒屋に客を奪われてしまう」
「常連客を失ってしまわないか」
当然の反応だった。社員の生活を守るために数字を優先すべきか。それとも理念に従って未来の顧客を守るべきか。どちらを選んでも批判される状況で、しかし、貫氏は譲らなかった。
「目先の売上より、理念にある通り、当社の串カツで成したいことを成そう」
会議で、時間をかけて説明した。「子供のときから来店して、大人になってまた来店し、その子供ができて、また家族で来てもらわなければ、企業理念やビジョンはとてもじゃないが叶わない。何世代にもわたって愛される店になるには、禁煙は避けて通れない」と。

「想定内の損失」を受け入れる
禁煙化から約1カ月後。予想通り、厳しい数字が並んだ。
客数:前年同期比102.2%(微増)
客単価:前年比95%(減少)
売上高:97.1%(減少)
客層の変化は劇的だった。ビジネスマンが31%から24%に激減。代わりにファミリー客が13%から20%に増えたが、ファミリー客の客単価は通常2400円に対して2000円と、400円も低い。「たこ焼き無料」「ソフトアイス無料」などの子供向けサービスの存在もあり、収益性は明らかに悪化した。
「目先の利益だけを考えれば『損』です。でも子供たちは『将来のお客様』。無料サービスを含めて『先行投資』だと考えました」(坂本氏)
実際、禁煙化から7年が経った今、子供の頃に来店していた客が訪れるケースも増えている。
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