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「耐えて、しのいで、乗り切る」、不二家が直面する物価高。社長が語る「経営の転換点」と「ダブルツートップ」作戦

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河村宣行/かわむら・のぶゆき 1954年生まれ。77年東京経済大学経済学部卒業後、不二家入社。菓子事業本部広域営業部長や執行役員菓子事業本部営業部長などを経て、2019年3月より代表取締役社長(現任)(写真:今井康一)
「ミルキー」や「カントリーマアム」などロングセラーの菓子商品を多数抱える不二家。製菓事業で大袋商品が販売を伸ばす一方で、赤字が常態化する洋菓子事業は商品数を約3分の1に削減するなど立て直しを図る。物価高が加速する中、どのような成長戦略を描くのか。河村宣行社長を直撃した。

 

前年比で約50億円の原価上昇を見込む

――物価高が進み原材料価格も上昇しています。直近の対策を教えてください。

2025年の抱負は「転換点」だった。ベトナムに工場を新設するなどの設備投資を進めていて、26年の成長に備えるという位置づけだったが、当初想定していたような飛躍は難しそうだ。

今、いちばん困っているのが原材料高。予測をはるかに超えて、25年は前年比で約50億円の原価上昇を見込む。主要原料であるカカオ豆と卵が高騰し、たいへんな逆風となっている。26年の前半ぐらいまでは、耐えて、しのいで、乗り切らなければならない。売り上げを伸ばすことは間違いなくできる。過去の設備投資をフル活用することで、26年後半に成長を目指したい。

とくにカカオ豆は目下、いちばん高い時期に仕入れた分を使用しているので当面は厳しい。例えば、「ルックチョコレート」は200円前後で販売しているが、本当は収益的に見合っていない価格だ。それでも、消費者の値頃感を飛び越えてしまうため、これ以上の価格転嫁はできない。

だからほかのビスケット商品などを一生懸命売って、全体の帳尻を合わせている。足元では、製品の販売構成が変わってきている。消費者の節約志向を受けて、大袋商品がものすごくよく売れているためだ。大袋商品は内容量の調整がしやすく、消費者の買いやすい価格を維持できている。コストアップを何とかのみ込んで、販売価格を維持することにかなり力を入れている。

――確かに製菓事業は好調で、安定して収益を上げています。供給体制は十分ですか。

25年10月は「カントリーマアム」の大袋2商品で、販売が前年同月比で約7割も増えた。こんなことは今までにない。従来であれば、工場が生産対応できないくらいだが、製造ラインなどへの投資を続けてきたことが功を奏した。今まで山田(憲典)会長にハッパをかけられて設備投資してきたかいがあった。

「ホームパイ」も段階的に設備投資してきている。オーブンの入れ替えによる大がかりな能力増強は、26年の秋ごろから動き始める。今の機械設備は納入までの期間が長く、1年以上前から準備しないといけない。売れると思ってから動き始めたら手遅れになってしまう。

だから、準備期間中に営業を頑張る。25年4月に新たに投入した定番商品「ホームパイ(アーモンドクッキー)」も販売を伸ばしている。2種類の「カントリーマアム」と2種類の「ホームパイ」を併せて棚に並べてもらう「ダブルツートップ作戦」を営業現場では推進してきた。特売商談などの得意分野も生かしつつ、小売店の面を取って、今はうまい具合に設備投資に見合った販売増加ができている。新商品がヒットしているのが大きい。

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