どのような職場にも20人に1人の割合でいる「サイコパス」。共感する能力が欠けている彼らが使う危険な人心掌握術とは

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こうしたアプローチの効果は絶大だったようだ。事実、いたく感銘を受けたGMのメアリー・バーラは、その1カ月後に開催された会合のスピーチで、あのときはトランプが自動車メーカー側の懸念について「本気で耳を傾けてくれた」と述べた。

トランプのツイッター(現・X)への投稿のせいで米国自動車メーカーの株価が下落し、時価総額が大きく下がっていたのにもかかわらず、トランプと直接会ったあとには大半のトップが支持にまわったのだ。

公の場ではツイッターで自動車メーカーをこきおろす横暴な人間だが、実際に会うと、トランプは魅力を全開にして相手をおだてて丸め込もうとするのである。

お世辞を言う能力に長けている

つまり心理学者たちが繰り返し立証してきたこと、すなわちお世辞を言えば物事がスムーズに進むことを、トランプは熟知していたのだろう。

たしかに人間は、お世辞を言ってくれる相手を信用しやすいのかもしれない。たとえ、それがどれだけ大げさだったとしても、明らかにウソとわかるようなものであったとしても。

もちろんそれはトランプだけの問題ではなく、すべてのサイコパスにあてはまることに違いない。「自分」を尺度とした絶対的な価値観を備えているからこそ、彼らは迷いもなくお世辞を言い、相手を持ち上げ、落とし込むのだろう。

サイコパスにとっては、世界は絶対に信用できない人間であふれかえっている。スーパーマーケットのレジでは釣銭をきちんと数えなければならないし、自動車整備士がやると言ったことを本当にやったのかどうか確認しなければならない。誰もが自分と同じように考えていると思い込んでいるので、被害妄想が極端に強いのだ。他人が自分のことを信用しているとは思えないので、少しでも隙を見せれば裏切られると思っている。それでも自分の魅力を駆使すれば、信用されやすくなることはわかっている。だからサイコパスに騙された人たちはよく、初めて会ったときにすっかり魅了されたと報告しているのだ。(144ページより)
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