どのような職場にも20人に1人の割合でいる「サイコパス」。共感する能力が欠けている彼らが使う危険な人心掌握術とは

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2017年、ホワイトハウスで開催された親戚の集まりに足を運んだメアリーは、大統領に着任したばかりの叔父が戸口に立ち、到着したゲストひとりひとりに歓迎の挨拶をしている姿を見た。

そのときのことを、メアリーは次のように書いている。「彼は私を見ると驚いたような顔をして私を指しながら『きみにはぜひ来てもらうようにと、特別に言っておいたんだ』と言った」[訳註『世界で最も危険な男』(メアリー・トランプ著、草野香、菊池由美ほか訳、小学館、2020年)]。そしてトランプは両腕を広げ、彼女をハグした。メアリーがトランプにハグされたのは、このときが生まれて初めてだった。(141ページより)

同書によれば、それはトランプがよくやる人心掌握の手であり、彼はその場その場に合わせて本気らしく話すコツを心得ているのだという。そのことばが本心ではないと知っていたメアリーは、なおさら感心させられたと振り返っている。

だがメアリーだけでなく、トランプと直接会ったことのあるほかの人たちも同様の経験をしているようだ。

気さくな人物を演じて相手を魅了する

また興味深いのは、2017年に10人以上の企業幹部やロビイストを招いて開催したという会合でのトランプの立ち回りだ。

アメリカの自動車メーカーの会合を主催した際、トランプはゼネラルモーターズ(GM)CEOメアリー・バーラの肩を気さくに叩き、「もっと地元の雇用を増やしてほしい」と穏やかな口調で頼んだのだという(会合を始める際、彼女のために椅子を引いてあげたりもしたようだ)。

また同じ会合で、フォードCEOのマーク・フィールズに「誕生日おめでとう。レディース・アンド・ジェントルメン、きょうは彼の誕生日だ」と挨拶した。フィアット・クライスラー・オートモービルCEOのセルジオ・マルキオンネには、お目にかかれて「非常に光栄だ」と伝えた。

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