たしかに私たちは基本的に善人ではあるものの、状況に応じて態度を変えることもあるに違いない。つまり、“他人が信用できるかどうか”を判断する際に役立てるために「共感する能力」を進化させてきたのである。
共感とはいいかえれば第六感であり、ウソ発見器の役割も、行動を調節する役割も果たしてくれる。他人の感情を察知し、自分のものであるかのように取り込んで意思を決定する際に利用するわけである。
共感できるからこそ、相手も共感力を備えていると仮定して、ウソをつくことを思いとどまるのだ。そして相手も共感を覚えているのだとすれば、こちらも傷つけられることはないと安心できるだろう。
少なくとも、私たちにとってはそうであるはずだ。サイコパスとは違って。
サイコパスは共感を利用した感情のフィードバックを通じて「態度を軟化させる」ことがない。これは、サイコパスが誰も信用できないことを意味する。相手を信用するための神経回路が形成されていないため、彼らは他人がたいていは率直であることはよくわかっていても、本当にウソをついていないのかどうか、確信できないのだ。(139ページより)
だとすれば、サイコパスはどうやって私たちを信用させるのだろうか?
(表面的には)とても魅力的になれる
その答えは、「魅力」の駆使なのだという。私たちは彼らに共感が欠けていることは察知できる可能性がある。しかし、それでもサイコパスたちは私たちを魅了し、察知がもたらす警報を無視させるわけだ。
ドナルド・トランプの姪のメアリーは臨床心理士で、2020年に出版された『世界で最も危険な男「トランプ家の暗部」を姪が告発』の著者でもある。メアリーは有名な伯父のファンではない。この著書で彼女は、サイコパスに備わっている数々の武器のなかでも最強のツールの特徴をよく物語っているエピソードを紹介している。その武器とは「魅力」だ。(141ページより)
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